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2010年1月24日 (日)

ウインザー城の恋人たち

/レディ・フォーテスキュー/

年齢差や育ってきた環境の違いを上手に乗り越えて、お互いを尊重しあい、支えあってきた夫婦のものがたりです。
『愛とは時間をかけてはぐくむもの』と帯に書いてあります。
二人の温かい愛情が周囲の人も包み込み、どんな環境にも溶け込んで、豊かに広がっていくのです。
読者もその愛情に包まれる一人になるのです。
ロマンチックなだけでなく、夫婦の意志の強さ、前向きな気持ちがよく描かれていて、読んで励みになる本です。
残念ながら絶版なので、少し詳しく紹介します。

これは著者の自伝であり、彼女が1888年に生まれ、賢い両親から可愛がられ、のびのびと育ってきたところから始まります。
生気に溢れ明るい彼女は、少女の頃から理想とする男性像があり、ジョンという名をつけて、いつか巡り合えることを夢見ていたのです。
それは多分に牧師であり威厳もあった、父親の影響を受けているのではないかと私は思います。
j彼女はそこいらの若い男では、満足できなかったようです。

牧師館の娘として生まれたのですが、17歳のときに家計を助けるために女優としてロンドンでデビューしました。
最初はいじめられたり、巡業でひどい宿に泊まったり、苦労もありましたが、若い彼女は人生を楽しみます。

23歳のときに、とあるティー・パーティーで、ついに理想の男性、ジョンにめぐり合います。
偶然にも、彼の本名はジョンだったのです。
二人はお互いに一目ぼれでした。
しかし二人の間には、30歳という年齢差と、明るく素朴な牧師の娘に対して謹厳実直な国王の側近という育ってきた環境の差があり、不安がいっぱいでした。
しかし3年間真剣に付き合った後、ついに二人は結婚します。
国王のライブラリアンであるジョンは、ウィンザー城に部屋を持っていて、二人の新居はウィンザー城から始まります。

ここまでの経緯が前半です。
とても素敵なものがたりですが、後半は逆境に立ち向かう二人の活躍があって、ますますおもしろくなります。


二人はお互いを尊重しあい、静かで愛情豊かな生活が始まりますが、世情は激しく変化していきます。

すぐに第一次世界大戦が始まり、夫ジョンが歴史書を著述する仕事に専念できるように、彼女はハウス・デコレーションの仕事を始めます。
彼女は女優としてだけでなくそちらの方面にも才能があり、さらにドレス・メーカーとして事業を拡大していきます。
その間に『アドミラル・ハウス』という古い屋敷を改装したり、自分の家のローズ・ガーデンでファッション・ショーを企画するという、彼女の大胆で新鮮なアイデアが次々展開していきます。
親戚に品物を届ける時もビジネスなので勝手口から訪問するというけじめを通したり、納期に間に合わせるため、体を心配する夫の手前一度入ったベッドから抜け出して、納得がいくまでこっそり仕事を続ける、といった職業人としての誇りを感じさせるエピソードもあります。
さらに隣に住んでいた作曲家エルガーとの交流や、王妃がひょっこりお茶に立ち寄るなど、イギリス上流階級の生活も出てきて、興味深く読めます。
そして全体を通して、お互いを思いやり、共通して美しいもの、誠実なものに価値を見出し、大切にしていく二人の考え方が素晴らしいです。

やがて過労と大戦中の奉仕活動の影響で、著者は体を壊してしまいますが、次は新聞のコラムニストとしての活路を見出します。

1926年にジョンは退職を決め、『アドミラル・ハウス』を引っ越して、ロンドン郊外の小さな屋敷『リトル・オーチャード』に移ります。
このとき思いがけず、長年真面目に国王のために働いてきた功績によって『伯爵』という貴族の称号を受けます。
牧師の娘だった著者も、このときから『レディ』の称号がつくようになるのです。

1930年にジョンは歴史書を書き終わり、彼はその生涯をささげた20巻の歴史書を、これまで16年支えてきてくれた妻に捧げます。
その時著者は42歳、そして夫は71歳なのです。

そこからの2人の軌跡は、別の本(プロヴァンスの青い空と海)に描かれていて、温かい南フランスで退職後の生活を楽しむジョンと、現地の人との交渉を一手に引き受け、夫の生活を快適なものにしようと心をくだく著者の心配りがほのぼのとします。

著者が夫の死後(実は、プロヴァンスで二人はいっしょに3年も過ごすことができなかったのです)書いた、最初の本が『プロヴァンスの青い空と海』です。
次に、未亡人となった彼女の再出発を描いたのが『プロヴァンスの小さな家 ―サンセット・ハウス物語―』、そしてその次に書いたのがこの『ウインザー城の恋人たち(原書はTHERE'S ROSEMARY, THERE'S RUE)』です。
その他の著書は未邦訳なので、原書で読んだらご紹介します。
(原書も絶版で手に入らず、只今中古を取り寄せ中です。)

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残念なことに、この本も今絶版中です。
でも、中古で簡単に手に入ります。

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