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2010年1月16日 (土)

クリスタル・シンガー

/アン・マキャフリイ/

主人公キラシャンドラ・リーは、冒頭で声楽家への夢を失う。

これは全編が、失った夢の代わりに新たなる天職を掴み、クリスタル・シンガーとして目覚ましく変身していく女性の物語りである。

その道の第一人者となる確率は、わずかしかない。
しかもクリスタル・シンガーになることを、出会った誰もが反対する。
反骨精神に充ち溢れるキラシャンドラは、夢を失った反動もあって、反対されればされるほどクリスタル・シンガーを目指したくなる。
その『目指したい』という気持ちが、彼女のその後に大きく影響するのだ。

キラシャンドラは、美人かもしれないが、目立ちたがり屋で謙譲の美徳は少しも持ち合わせず、オペラ歌手志望時代は友人一人もなく、勝ち気で可愛げがない。

しかし好きなことに向ける情熱は、人一倍。

そんなキラが、の傷心から気を取り直して新規巻きなおしをする物語だ。
読者が元気づけられること、間違いない。

また、『クリスタル・シンガー』という職業も魅力的だ。
『絶対音感』という特技と、ボーリィブランという特殊な惑星に適応できる体質があれば、次の体験ができるのだ。
『ひとつの音を、清らかな、澄んだ真ん中のCを歌って、それがひとるの山並み全体によって応えられるのを想像したことがあるか?』
『三度上がっても下がっても同じことだ。歌えば和声(ハーモニー)が返ってくるのが聞こえる。岩場全体がCに合わせられ、別のピンクの石英の断崖が属音(ドーミナント)でこだまを返す。夜になると短調に転じて、胸が痛むほどだ。世界中で一番美しい痛みだ。クリスタルの音楽が骨の中に、血の中に入り込んでいるからで・・・』

もちろん著者、アン・マキャフリイのオリジナルな設定だが、とても斬新なアイデアである。
ここではその仕事の素晴らしい側面と、そしてそれに没頭するあまりに忘れ去られてしまうものが、とてもリアルに物語られている。

仕事に没頭するあまりに、ないがしろにしてしまった仲間、恋人、身づくろい・・・。
そしてその代償として得た達成感、恍惚感、そして現金。

さらに設定は過酷で、その現金は主にクリスタルとの身を削る交流から一時的にでも逃れるための、星外旅行に費やされる。

あくまでもSFだが、どこか私たちの現代の生活につながる部分があり、考えさせてくれたりもする。

こんなインパクトの強い本が、現在絶版で中古しか手に入らないとは。

アン・マキャフリイは私の大好きなSF作家で、特に売れているのは『パーンの竜のシリーズ』や『銀の髪のローワンのシリーズ』だが、私は中でも気が強く、肉体労働に明け暮れるキラが気に入っている。
彼女に関するシリーズは、この後の『キラシャンドラ』の2冊きりで、どちらも絶版なのだ。
ぜひ、復刻をお願いしたい。、



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