« 深夜食堂 1~5 | トップページ | ブルー・シャンペン »

2010年1月 8日 (金)

たったひとつの冴えたやりかた

/J・ティプトリー・ジュニア/  挿し絵:川原由美子

最初に登場するお話の主人公は、16歳のファースト・コンタクト(宇宙人と最初に接触すること)にあこがれる少女。

色恋沙汰には興味がないが、好きなことには夢中になる元気な女の子だ。

彼女は偶然のことから、望み通りのファースト・コンタクトを体験する。

相手は、脳に寄生するタイプの宇宙種族だ。

この寄生生命体も、種族の中のはねっかえりで、冒険を求めて宇宙をさまよっていた。

お互いのことを知れば知るほど、2人は仲良くなっていくが、この生命体には恐ろしい秘密があった。

そして、問題を解決するために2人が協力して考えた方法は・・・



作品のほとんどの部分が、少女が外部に送ったカセットに吹き込まれたメッセージという形で、生きいきと状況説明が語られている。

前向きで明るくそして誠実な少女が、絶体絶命の状況下で解決策を練る。

人生に対する愛情と、人を信じる素直な気持ちがたっぷり感じられる作品である。

この作品を書いた後の作者の状況を考えると、少女の頑張りが作者自身の葛藤と重なっているように思われる。



鬼才ティプトリー・ジュニアの最後の作品(1986年)。

彼女はペンタゴン勤務後、実験心理学の博士になったが、体を壊してやめて、53歳からSF作家としてデビューした。

ペンネームが男性名で、作品も鋭い切れ味のある辛口のものばかりだったので、ずっと男性作家と思われていたが、のちの女性であることがわかり、人々を驚かせた。

数々の受賞作品があるが、71歳(1987年)のときに、老人性痴呆症が悪化した夫(87歳)を、かねてから2人で決めかわしてあったように撃ち殺して、自分も自殺をとげた。

冷静かつ頭脳明晰で、激しい生涯を送った作家である。



大切なものを守るための、たったひとつの冴えたやりかた。

これがティプトリーの出した答えなのだ。



ところで、この小説は、図書館に資料を探しにくる未来の若い宇宙人カップルと、図書館司書のものがたり、という設定になっている。

冒険好きの少女のお話はその1話目で、さらにあと2つのお話が入っている。

ぜひ、お楽しみください。



にほんブログ村 本ブログ 読書備忘録へ
にほんブログ村 

ランキングに反映します。押していただけますか?



 

最近、3篇の中からこのタイトルだけ抜き出して、改訳版が出ました。

|

« 深夜食堂 1~5 | トップページ | ブルー・シャンペン »

SF」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/551582/47238274

この記事へのトラックバック一覧です: たったひとつの冴えたやりかた:

« 深夜食堂 1~5 | トップページ | ブルー・シャンペン »