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2010年1月26日 (火)

貧乏サヴァラン

/森 茉莉:著/早川暢子:編

森林太郎(鴎外)の長女で耽美小説家および辛口エッセイストの森茉莉のエッセイ(森茉莉全集(全8巻)収録1993~1994)から、編者が食に関するものを抜き出した本である。

森茉莉は少女の頃に鴎外に溺愛され、その結果身に付いた妙な自己愛と生活能力の欠乏が祟ってか、2度の離婚を経て、世田谷のアパートで貧乏な一人暮らしをしていた。

生活は貧しくても心は貴族という心意気で、食事にだけは気を配り、トーストにバターを塗り、ジャムをつけ、おいしい紅茶を入れて楽しんだ。

少女の頃鴎外家で楽しんでいた果物やお菓子の話、若い頃フランスで暮らしていた時に覚えたおいしいメニューの思い出や、気に入った菓子を手に入れるためにどんな苦労をするかといった身近な話など、食いしん坊の茉莉ならではの話が次々登場する。

話があちこち飛んだり、まるきり関連のなさそうな袋小路に入り込んだり、あくまで森茉莉個人の一方的な解釈だったり、はじめて読む人にはとまどう描写も多いと思う。

しかし森茉莉に慣れた私たちにとっては、快哉をさけびたいほど切れ味がよく、一人暮らしの老婆の割には見聞が広く、話題も豊富でおもしろい。
たとえば、酒が飲めないくせに壜が好きとか、母に教わった江戸っ子料理、父がこだわったドイツ料理、舅の娼がささっと作る酒のつまみ、パリで覚えた生牡蠣など、食に関心の強い茉莉ではこそよくぞ覚えていた、といった話が次々と尽きない。

こちらも思わず食べに行ったり、作ったりしたくなる。
茉莉自身、他のことからは想像もつかないくらいに、とても料理は上手だったようだ。


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