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2010年2月21日 (日)

どうぶつ学名散策

/小森 厚/ 

動物たちの学名についてのさまざまな蘊蓄を、著者の実学上の豊富な知識と、長年にわたる資料の研究に基づいて書かれた本である。
著者は、長年上野動物園や多摩動物園に勤務しラベルの仕事を担当してきた方である。
仕事上必要になってラテン語やギリシア語を独学で学び、学名というものに一般の読者も気軽に親しめるように工夫して章だてをし、興味深い例をたくさん挙げて紹介したものである。

まずリンネの二名法の紹介から始まる。
次に、数に基づいたもの(1はイッカク(角がひとつ)、2はサイチョウ(嘴がふたつ)など)、色彩に基づいたもの(ダイサギ(白いサギ)など)、鳴き声からつけたもの(カッコウの属名ククルスなど)、地名に由来するもの(トキはニッポニア・ニッポン、ニホンジカはケルヴス・ニッポンなど)、神話や聖書からとられたもの、それはもう多岐にわたり、さまざまなおもしろいケースが列挙されていく。

著者は、自分が動物園で取り扱ってきた哺乳類、鳥類の割合が多くなってしまったと書いているが、魚類、昆虫類も出てくるし、日本固有種から外国にしかいないものまで、扱う動物たちの範囲は広い。
巻末の索引を数えてみたら、哺乳類125種、鳥類89種、爬虫類13種、両生類7種、魚類15種、昆虫類18種、昆虫以外の無脊椎動物10種、植物7種であった。

単に学名を列挙するのではなく、なぜその学名がついたのか、その由来も詳しい。
たとえばゴクラクチョウはインドネシアからパプア・ニューギニアにかけて分布する鳥なのだが、その1種のオオフウチョウは『あしのない、極楽の鳥』という意味の学名がついている。(英名も、バード・オブ・パラダイスという。)
それは、1700年代にヨーロッパに送られた剥製は、その飾り羽を傷つけないように足を切り取った状態で箱詰めされていたからである。

学名の紹介のみならず、頻繁に出てくる動物そのものの紹介がまた興味深い。
たとえば、『~がない』という意味で学名がつけられた例としてアシナシトカゲが登場するが、そこでトカゲとヘビの違いなども説明してくれる。
ちなみに、アシナシトカゲは足がなくひょろ長い生物でみかけはヘビのようだが、れっきとしたトカゲなのである。
ワライカワセミの鳴き声を録音しようとしたときの苦労話も、動物園勤務をしてきた著者ならではの逸話である。

さらに、本に豊富に載っている挿絵が美しく、分かりやすい。
挿絵は本田公夫氏によるものである。


学名は、一度つけたら例え著者であっても、不適当を理由につけかえてはいけないという決まりがあるそうだ。
有名な誤りに、日本の鳥のコマドリとアカヒゲのつけ間違いがある。
コマドリをルスキオーラ・アカヒゲ、アカヒゲをルスキオーラ・コマドリと、江戸時代の末期に標本に基づいて(たぶんそのとき入れ替わったのだろう)オランダのライデン王立自然史博物館の館長テミンクが誤って名付け、現在もそのまま使われている。
また、日本にゴイサギとその近縁種のミゾゴイがいるが、この学名もまたややこしい。
世界的に分布するゴイサギの方は、ニコティコラックス・ニコティカラックス(夜のカラス:夜飛びながらカァカァ鳴くから)という学名がついているが、テミンクがミゾゴイ(日本固有種)の方をニコティコラックス・ゴイサギと名付けたからである。

こういった事情を頭に入れてから改めて図鑑をみると、楽しさが倍増するものだ。
また学問というものは、長い間の試行錯誤の蓄積の上に成り立っているのだと、改めて実感できる。

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昭和58年第1刷発行
残念。もう絶版なのですね。
写真がないので、私の本をスキャナーで撮ります。

Doubutu
















20100220

グリムスの画面が変わっていました。
冬季オリンピックの開催期間だからでしょうか。

でも、『植林』のお客さまには会えませんでした。
がっかり。

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