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2010年2月26日 (金)

銀座ミツバチ物語

美味しい景観づくりのススメ   /田中 敦夫/

久しぶりに、応援したくなる環境プロジェクトを知った。
この本は、サイエンスというほど客観的ではないので『エッセイ』のジャンルに入れてみたが、単なる個人の体験・感想の域を越えている。
周囲の人を巻き込み、自分を信じて元気にプロジェクトの実践を続けていて社会的な影響が大きく、ニュースにもなり、ハチミツは驚くほど採れ、プロジェクトはさらに拡大していく様相を示している。
環境運動というと地道であるし、何のための運動なのかの軸がずれて形骸化したものも多い中、確実に成果をあげている点が注目すべきである。
また関わりのあった人々の発想を試行錯誤しながら実現し、知識と経験を吸収し積み重ねながらさらに多くの人を巻き込んでいく運動の発展に、熱いものを感じる。

著者は株式会社紙パルプ会館の常務取締役で、銀座でミツバチを飼おうとしていた養蜂家、藤原誠太さんの話を聞いて、屋上を貸すことに決めたことからすべては始まったそうだ。

銀座のような人通りの多い所で、針を持ち危険性のある動物を飼えるのか?
銀座にミツバチの餌など、存在するのか?
しろうとが、ビルの屋上などで養蜂などできるのか?

やがてプロジェクトははじまり、最初は沖縄で育てた西洋ミツバチの飼育箱を3箱、屋上に置いた。
そのときの、蜂蜜の香りのくだりが印象的だ。

『 二〇〇六年の春、沖縄からやってきた三箱のミツバチは、今が盛りのソメイヨシノの蜜をせっせと集めはじめていました。はじめての採蜜作業の日、藤原さんに勧められるままに、直接、巣からハチミツをなめてみたのです。
 シークワーサの香りと、桜の香りが鼻腔の奥を刺激したあの瞬間。私はハチミツの魅力に取り付かれてしまったのです。ミツバチたちが沖縄ではシークワーサーの花蜜を採っていたことが瞬間的にわかりました。同時に、ソメイヨシノの香りもわかりました。ハチミツが鼻の種類によって、明らかに違うことを確認した瞬間です。
 次の週、シークワーサーの蜜はしっかり搾ったために純粋なソメイヨシノのハチミツになったなあと思ったら、翌週は少し油っぽい菜の花に。それが終わると今度はユリノキのハチミツになりました。』

当然私は自分もミツバチを飼って、季節の移り変わりを味覚と嗅覚で体験したいものだと憧れた。
そう、学校の屋上などに一箱設置できないものだろうか。

筆者はその後、ニホンミツバチたちが分蜂するたびに連絡を受け、駆除するかわりに巣箱に収納して飼うようになった。
いつの間にかミツバチの苦情相談担当として活躍し、それをぼやきつつも、チャンスは逃さない。
筆者は環境問題に関しては全くの初心者だし、それを隠さない。
他人任せでおいしいハチミツが食べられたら・・・ぐらいの考えで始めた『銀座ミツバチプロジェクト(略してギンパチ)』、さまざまな人々のアイデアや、偶然や必然がからまって4年目、ますます発展中である。

文明堂なども老舗に『ハニーカステラ』の材料として使ってもらったり、有名バーのオリジナルカクテルに仕立ててもらったり、熊やメダカなどをサポートする各地のNGOと手を結んだり・・・
そう、ついには本を出版するほどに。

著者は作家ではないから、話も過去に遡ったり現在や未来が錯綜し、時系列を掴みにくい。
資料もほとんどなく、裏をとろうにも索引がない。
しかし本書に一貫して流れているコンセプト、『大人が真面目に遊ぶ』がストレートに伝わってくる。
大人が読んで、元気になる本。
めぐりあえて、よかった。



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公式サイトもあります。
銀座ミツバチプロジェクト GINPACHI

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