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2010年2月 1日 (月)

歌う船

/アン・マキャフリー/

我ながら偏った取り上げ方だと思いますが、マキャフリーはSF小説の中でもとっつきやすいと思っているので、もう少しお付き合いお願いいたします。
次にご紹介する予定の『竜』のシリーズも素晴らしいですが、私はこの『船』シリーズが彼女の作品の中でも一番好きなのです。

生まれつき身体に障害を持っていたため、その身体から切り離されたヘルヴァの脳は、『頭脳船(ブレイン・シップ)』とく偵察船の脳となるべく育てられたのだ。
そして16歳の誕生日にチタニウムの殻の身体に入り、ついに船として生まれ変わる。
どんな素晴らしいコンピューターにも負けない、柔軟性と経験を積んだ宇宙船。
その頭脳で、音楽を愛し、恋に落ち、嘆きもし、ひとりの女性として生きていくのだ。

ヘルヴァの趣味は、オペラを歌うこと。
何百歳も生きる彼女たちブレイン・シップの頭脳たちは、船体に閉じ込められているという意味で『殻人(シェル・パーソン)』と呼ばれる。
それに対して、こうしたブレイン・シップを繰る操縦士たちは『筋肉(プローン)』と呼ばれる。
シェル・パーソンとプローン組み合わせは結婚のようなものである。
なぜなら彼らは大抵ペアで75年間も、ともに生活するからである。

この本は、こうしたヘルヴァとそのプローン達との冒険の物語である。
彼女より短命で脆弱なプローン達とは、たとえ素晴らしい絆を築いていても、やがては別れる運命である。
ウマの合う相手もいるし、合わないものもいる。
音楽を愛することはキーワードになるが、それだけが決め手というわけでもない。
ヘルヴァは女性だが、プローンがいつも男性というわけでもない。
そんな彼女とプローン達との冒険が、全部で6編収められている。

『歌った船』
『嘆いた船』
『殺した船』
『劇的任務』
『あざむいた船』
『伴侶を得た船』

ヘルヴァはサイボーグであるが、その能力に自信を持ち、人生を明るく生きていく。
そんな彼女の力強さが、この作品の魅力である。
1969年に出版されたこの『歌う船』のアイデアは、その後1990年代になってさまざまなSF界の若手との共著で展開されていく。
でも私はこの『ヘルヴァ』の物語が新鮮で、特に好きだ。
逆境をものともしないというよりも、障害を持って生まれたことを苦と思わず、むしろチャンスと考えているらしい、ヘルヴァの前向きな気持ちが好きだ。

少女から一人前の女性へと成長していく、一人の女性の物語として、SFが初めての人もそうでない人も、十分楽しめる古典だと思う。



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ありがとうございました!


 
今はこういう装丁なのですね。
あまり『船』っぽくないですね。
ちなみに私のはこれ。↓
この装丁も好きだし、価格もたったの450円でした。(1985年)
カバーは、『佐藤弘之さん』。

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