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2010年3月22日 (月)

踏みにじられたユリ

TRAMPLED LILIES  by Lady FORTESCUE

『プロヴァンスの青い空と海』『プロヴァンスの小さな家』『の著者、レディ・フォーテスキューが第二次世界大戦のプロヴァンスでの生活について書いた、4冊目の本である。
日本では翻訳されていないし、原書でも絶版中である。
私もまだ4分の1しか読んでいないが、毎日電車の中で少しずつ楽しんでいる。

夫を亡くし、思い出の家を売って小さな農家を改造しながら住んでいたささやかな楽しみもつかの間、プロヴァンス地方にも戦争の影は迫ってきた。

最初は次々とやってくるフランス軍が滞在するために、仲良しだったマドモワゼルとともに家(マドモワゼルは城)を明け渡し、小さな小屋に寝起きしていたときのことが語られている。

フランス軍といっても、農民の寄せ集めだ。
著者が語りかけると兵隊たちは、気がかりなことを話してくれる。
刈り入れ間近の畑を、年取った両親だけにして置いてきてしまったこと。
故郷で待っている、かわいい盛りの娘や息子。
恋愛中の彼女のこと。
彼らを守るための行軍とはいえ、片時も忘れることはできない。
写真を、手紙を、取り出して、著者にも見せて涙する。

行軍についてくる犬もいる。
主人が出征し、同じような格好をした兵隊たちが、後から後から通り過ぎてゆく。
どこに主人がいるのだろうか、犬たちは隊列を前から後ろまで探し回り、見つからないとついには兵隊たちとともに行軍を始める。
飼い主を探してついてくる、そんな犬たちが何匹もいた。
動物好きの著者は、そんなところにも眼が行ってしまうのだ。

秋になって、ニースなどではまだまだ夏の気分が残っているときに、ある三つ星の将校のアイデアで、アルプスの高地に駐留する部隊を慰問に行った。
スキーを車に載せて、温かい毛布やリネン類、食糧もいっぱい3台の車に積み込み、2人の女性と1人の運転手、そして2匹の犬とともに出発だ。
ところが山道で、マドモアゼルの車が崖から転落してしまう。
九死に一生を得たマドモワゼルは、冷静沈着に事態に対処をし、事態に震え上がってしまった著者を感心させる。
なるほど、第一次世界大戦で活躍した肝っ玉の太さというわけだ。
(マドモワゼルはアメリカ人なのだが、理由あって国を去りフランスに来て、先の大戦中は従軍看護婦として働いていた。)
助けを呼んで来てもらうのだが、落ちてしまった車をめぐってプロヴァンス人らしくみんなでわいわい議論を述べ立て、結局最後には通りすがりのタンクローリーに引っ張ってもらう所は、読んでいても楽しい。

さて今はそんなところで、まだあらすじの紹介にすぎない。
しかし読んでいて感じたているのは、もともとはイギリス人の著者や、アメリカ人のマドモワゼルが、たまたま戦時中にそこに住んでいたからという理由だけで、一生懸命にフランスの軍隊に奉仕し、村人の便宜を考えて車であちこち駆け巡るというのは、今の日本人の感覚ではなかなかできるものではない、ということだ。

家を宿泊所として明け渡し、次々来る軍隊それぞれが快適に過ごせるように、間に1時間をもらって一生懸命に掃除をする。
ガソリン代など無頓着に、便利がいいように車を出して運転手をつとめ、パンや薬など必需品をかき集めてくる。

戦争でなくても、災害が起きた時などに、私たちはそこまで人のために動けているだろうか?
今の自分を振りかえって、申し訳なく思いながら読んでいます。

『踏みにじられたユリ2』につづきます。

レディ・フォーテスキューに関するHP(英語)


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(あまりにも更新しなかったので、グリムスの木がしおれてきました。)

Trampled_lilies2

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