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2010年6月20日 (日)

踏みにじられたユリ5

前回は、『メニー・ウォーターズ』に住むことを決意したところまででした。

ここで再び、著者にとっての素晴らしい出会いがあります。
ロンドンの赤十字を訪れた時、背が高く、印象的で魅力的な女性が階段を下りてきたのに出会うのです。ビクトリア駅への道を尋ねると、その人は白髪で、自然なピンクの頬をしていて、澄んだ青い目で優しそうに物おじすることなくまっすぐ著者を見つめました。そして逆に著者に『フランスの兵士のための仕事を知りませんか?』と尋ねてきたのです。少しスコットランドのアクセントがありました。『私はずっとニースのスコッチ・ティー・ルームの支配人だったのです。』と彼女は謙虚に付け加えました。
著者は思わず首に抱きつくところでした。フランスにいた頃、そのまさに同じ喫茶店で、何度おいしいケーキを味わったことでしょう!
『私はフランスから帰ってもう1年も、イギリスでフランス軍を助ける仕事を探しているのですが、政府は私をいらないみたいなのです。だからウェイトレスか売り子でもしようと思っているのですが、仕事が見つからないのです。』
『私の所で働いて!』と著者は言います。『私もフランスから脱出してきて、人里離れた猟師の小屋に住んでいるのです。私は本を書く仕事をしているので、料理をする時間が無いのです。私の所に来て、面倒を見ていただけませんか?』
著者は彼女をとても気に入ったので、見せると言い張る紹介状も見ようとしませんでした。直感で、素晴らしい人だと見抜いたのです。しかも偶然、彼女はサセックスの妹のところに滞在していたので、『メニー・ウォーターズ』へはバスで行くことができるのです。
道でばったり会っただけで、これだけ素晴らしい人を見つけ出すことができるのですから、やはり著者には特別の才能があるという気がします。


引っ越しには、いくつもの問題がありました。著者は引っ越し業者に手紙を書きます。
『どうやって家具を運んでいただけるのかは、私にはわかりません。私は車道のない崖の下の小屋に住んでいます。そこへ行くまでの道も、大型トラックには狭すぎます。ラバかパラシュートぐらいしか私には方法が考えられないのです。でももし日程を決めて、私に屈強で忍耐強く勇敢で、私に対して親切で、どんな困難も笑い飛ばす男たちを送ってくだされば、何とかなるでしょう。もしも天候が良ければですが。そして、男たちが私の家まで家具を運んできてくれたら、ねぎらいのために一樽のビールを注文しておきます。』
さらに『湖のレディ(著者につけられた敬称です)』を助けるためになら何でもするという、熱心な隣人にも食糧その他の件で助けられ、道路状況の良い8月に天候にも恵まれて、引っ越しは大成功に終わります。
しかも、例のスコットランド人の女性に、とうとう政府の仕事が見つかるのです!せっかく見つけたメイドと別れなければなりませんが、著者は祝福して送りだします。

そしてやっと検疫期間の終わった愛犬ドミニーと『メニー・ウォーターズ』に落ち着き、この本の最後は1941年3月の著者の手紙(おそらく読者に宛てたもの)で終わります。
『私はこの手紙を、私の小さなグリーンの部屋で書いています。・・・かたわらには私の『黒ちゃん』がいます。・・・フランスの占領されていない部分と通信ができるようになり、今日私はマドモワゼルと話すことができました。彼女とスクイブは、孤独に城に住んでいますが、彼女が農民のために食糧を作り、スクイブはネズミを捕っていることでしょう。マドモワゼルは、アメリカの国籍を再び取り直すことに同意しました。今朝BBCニュースが、『アメリカはイギリスを援助する』という、ルーズベルト大統領の力強いスピーチを紹介しました。マドモワゼルは、どんなにアメリカを誇りに思うことでしょう。・・・』

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さて、この後著者は、"Mountain Maddness"(山狂い)という本を出しています。
これは、著者とマドモワゼルが第二次世界大戦前にフランスのアルプスで、野外生活を楽しんだ記録なのですが、残念ながら本が手に入らず、まだご紹介できません。

次にご紹介するのは、"Beauty for Ashes"。
『メニー・ウォーターズ』で愛犬ドミニーと暮らした日々を中心に書かれています。
この小屋は、資料としてはぼんやりとした写真しか残っていないようですが、今もあるのでしょうか。
とても魅力的に描かれているので、ぜひ私も訪れてみたいです。

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