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2010年6月 2日 (水)

踏みにじられたユリ4

う~ん、お久しぶり!

とうとうレディ・フォーテスキューに、検疫許可書が届きました!
愛する黒いコッカー・スパニエルのドミニー(私の黒ちゃん)と船に乗って、イギリスに着きますが、それからドミニーは、6ヶ月間の隔離期間を過ごさなければならないのです。
著者は、兄(父の後を継いで、牧師です)の家へ滞在することになります。
愛する姪っ子たちの大歓迎を受けるのですが、著者はフランス軍が気になって仕方ありません。
フランス兵士が療養している病院を訪問して、雑誌や新聞を買って持っていったり、ラジオのニュースを翻訳してあげたり、ボランティア活動を展開します。
そんな病院訪問の最中でした。フランスがナチス・ドイツに占領されたというニュースを受けたのは・・・

さてレディ・フォーテスキューには、ロンドンで別の仕事もできました。
それは『プロヴァンスの青い空と海』を朗読して、『オーディオ・ブック』を作ることです。
かつての演劇の仕事で多少は舞台度胸がついているとは言え、久しぶりに自分の身ひとつを差し出しての仕事です。マイクの前に座り、赤いボタンを押して、朗読する間、緊張のし通しでした。そして、いよいよオーディオ・ブックの完成も間近というある日・・・

なんと空襲でスタジオがやられ、これまでの資料はすべて無となってしまったのです!
残念!この空襲さえなければ、有名なレディ・フォーテスキューの本を、著者自身が読んでいるのを聞けたのに。

占領されたフランスからは、続々と人々が亡命してきます。
そんな殺伐とした雰囲気の中、著者は気になる物件を見つけます。
『週末の小屋。家具なし。電気なし。素晴らしい風景。小川に囲まれ、木々の影に隠れた格安の賃貸』

下見に行くと、もいつも着ている白っぽい服からその名も『白いレディ』と名付けられた女性が、『私は地主の母親なの』と名乗っていました。『ちょうどあなたの最後の本を読んでいたところなの』
なんとその婦人は、著者の本の愛読者であったのです。

件の家は、偽りなく素晴らしい眺望でした。
樹木でいっぱいの渓谷の中ににいくつか小さい湖が点在し、それぞれが小さな滝で結ばれているのです。草で覆われた斜面に灰色の石の階段が刻まれ、シャクナゲに囲まれたそれを降りていくと、『プライベート』と書かれた小さな門があり、さらに滑りやすい狭い道を降りてゆくと、大きな岩の横に立っている、奇妙に高い煙突のある小屋へ行き着くのです。小屋の前の草原の先には、一番低く、一番大きな湖が広がっているのです。苔むした枝の古いリンゴの木が枝を伸ばし、大きなスイレンが湖に花を浮かべています。そこへめがけて茂みの間から小さい滝が落ち込み、その先にはカシの木の向こうに2つ目の滝、その上に3つ目、4つ目、そして5つ目!。それぞれの湖のほとりは飛び石で結ばれていて、草に覆われ、野いばらに縁取られた散歩道が両側に、ブナの茂みで見えなくなるところまでずっと続いています。小屋の向こうには、もっと大きな滝が小さい小川に落ち込み、秘められた渓谷を流れ下って行くのです。小屋の周りはどこもかしこも、沢山の水の音ばかりが聞こえます。さっそく聖書の一節にちなんで、『メニー・ウォーターズ』と彼女は名付けました。
実際的にならなければ!
こんなに人里離れ、車も通らない所に住めるのでしょうか?いっしょに住むメイドが見つかるでしょうか?家具をどうやって運べばよいのでしょう?病気のときに電話もなく、助けを求めて斜面を登れるでしょうか?小屋はリフォームされ、清潔ですが、著者が住むとすればいくつかの改築が必要です。この戦時中に、余分な蓄えを使う価値があるでしょうか?
一方案内してくれた『白いレディ』は、魅力的な面をさらに教えてくれます。
『うちのコブタたちに餌をやってみませんか?みんなピンクでかわいいの。ホウレンソウの葉をやると、しっぽを振るのよ。』『それに、赤ん坊も50人いるの。戦争だから、母屋を疎開してきた幼稚園に明け渡して、私たちは他の小屋に住んでいるの。いつかあの赤ちゃん達に会わなければ。来たばかりの頃は、汚くて痩せていたけれど、数週間のうちに花が咲くように素敵になったわ。』
そのとき斜面の上の方から声がして、その赤ん坊たち、いえ50人の小人や妖精たちが、赤、青、黄、緑、さまざまな色の帽子をかぶって現れ、『白いレディ』にすがりつき、仕事の後にお茶に来てねと誘い、お守の人たちと去ってゆきました。コブタ達も約束通りにかわいらしく、たまたま家主の小さすぎるポケットに入っていた鍵が落ちて、いくら探しても見つからなかったのですが、10日後に1匹の口の端から鍵の紐が垂れ下がっているのが発見されたということです。
そんな魅惑的な1日の後、著者は少しめまいを覚えながらバスに乗って、件の物件を再考するために兄の牧師館に帰りました。

次の朝最も活力が弱まっているときに、とうとう否定的な問題に圧倒されて、著者は家主に断りの手紙を書きます。それに対して送られてきた熱心で、理論的に困難に対する解決を示してくれた手紙によって、再び心が変わり、とうとう『5年間、あるいは戦争が終わるまで、どちら長い方』の期間、『メニー・ウォーターズ』を借りることになるのです。
もちろん兄の家族たちは反対します。サセックスの物件のある地域は、ドイツからロンドンを空襲するために飛んでくる戦闘機の通路になっているのです。しかし著者は答えます。
『もし私が戦争に巻き込まれなければならないのなら、むしろまっただ中にいた方がいい。』
兄も、小さいときから神に向かって『私に事件を与えてください。良くても、悪くても、とにかく何かが起こりつづけますように。私はすべてを感じたいのです。』などと祈る、嵐のような妹に慣れていて、とにかく妹に幸せになって欲しかったので、ついに折れます。そして著者が木々や水について興奮して語るのを、辛抱強く聞くことにしたのです。

5につづきます。

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