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2010年9月12日 (日)

An Echo in the Bone 骨の中のこだま9

前回時間がなくて、章の途中でアップしてしまいました。
中途半端でごめんなさい。
今回はその続きです。

ウィリアムは、居酒屋の窓から中をのぞいてみた。
今や、ロジャーズ自身がヘイルというスパイや2人の農民と話をしていた。
ロジャーズは、何か冗談を言ったようだったが、相手の反応を見ると、相当きつい冗談だったようだ。それからロジャーズは何気ない風に後ろにもたれ、みんながうなずくような何かを言った。そして身を乗り出して、何かヘイルに訪ねた。

居酒屋の騒音と、外を吹きすさぶ風の音でよく聞こえなかったが、ロジャーズは自分が反逆者だと打ち明け、彼の手下たちが熱心にうなずきながら近づき、ヘイルを囲んで秘密の輪を作っていくのがわかった。ヘイルは会話に集中し、わくわくしながらのめりこんでいくようだった。ロジャーズはヘイルがアメリカ側の将校の一人なのだと言っていたが、本当に校長先生だったのかもしれない、とウィリアムは思った。ヘイルは、まったく軍人には見えない。
それに、ヘイルはスパイにも見えない。なにしろ目立つのだ。金髪でいい男だし、顔に目立つ傷があるし、背が高いし・・・

ウィリアムは、胃袋に冷たい塊を感じた。やれやれ、これがロジャーズの仄めかしていたことなのか?彼はリチャードソン大尉に関わる仕事について、今夜自分の目で確かめろと言っていた。

ウィリアム自身も、自分の背の高さと、それに対して人々がみせる無意識の反応には慣れていた。見上げられることが、むしろ好きだった。
しかしリチャードソン大尉にもらった最初の仕事をするにあたって、背の高さは目立つことだし、簡単に彼を表現できてしまうという点を全然考えていなかった。
『でけぇ怪物』とは、ほめ言葉ではない。でもその言葉なら、誤解が起こり得ない。

不審な気持ちを抱きながら、ウィリアムはヘイルが自分の実名を明かしたばかりでなく、彼が反乱軍に傾倒している事実すらあからさまにし、さらにイギリス軍の強さを観察しているということまで打ち明けているのを聞いていた。さらにヘイルは熱心に、近所でイギリス軍の兵士を見かけたか訪ねていた。

ウィリアムはその無防備な態度にショックを受けた。ロジャーズはあたりを見回してこっそりヘイルに寄り、腕をたたいてささやいた。
「だめですよ、だんな、本当に危険ですよ。誰にでも聞こえちまう!」
「プッ」とヘイルは笑った。「ここのみんなは、友達さ。ワシントンと国王を間違えるほど飲んじゃいないさね?」酔ってはいたが熱心に、ヘイルは居酒屋の主人を呼んで、もっとビールを持ってくるように言った。「もう一杯飲みなよ、そして何を見たか、話してくれよ。」

ウィリアムは思わず、「いいかげん黙れ!このおしゃべり野郎!」と窓から叫びたい衝動にかられた。もちろん、もう遅すぎる。ウィリアムはまだ、食べかけの鳥の足の骨を持っていたので、投げ捨てた。血がたぎっていたが、胃はねじれるようで、のどの奥に吐き気を感じた。

ヘイルは、さらにどんどん決定的な告白を続けていった。ロジャーズの手下たちが、感心したり、愛国者的な叫びをあげて、雰囲気を盛り上げた。みんな、自分の役割を感心するほどうまくこなしている、とウィリアムは認めざるを得なかった。
ヘイルはそれに対して、さらに大声で反応し、彼の頬はビールと情報を手に入れているという興奮とで真っ赤だった。

ウィリアムの方は、足、つま先、手、顔が麻痺し、緊張で肩が痛んでいた。
突然ポリポリ齧る音が近くでして、ウィリアムは居酒屋の中の情景から注意をうつし、足元を見降ろした。
そのとき気付いた突き刺すような臭気が、それの正体をほのめかしていた。

「なんてこった!」

ウィリアムは叫び、後ろに飛び下がった。
あやうく肘が、窓を突き破りそうになった。
居酒屋の壁に、背中からどしんとぶつかった。

邪魔をされて尻尾を持ちあげていたのは、捨てられていた鳥の骨を楽しく齧っていたスカンクだった。
白い縞模様のおかげで、その動きは、はっきりと見えた。
ウィリアムは固まった。

スパイをスパイするウィリアム。
長かったこの章も今回で終わりです。
子どものときにクレア達の小屋を訪ねた時、ウィリアムはヘビにびっくりして肥えつぼに落ちました。
どうしてウィリアムは、いつも臭い事件に巻き込まれるのでしょうね?
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「いったい、何だ?」
居酒屋の中の誰かがそう言い、ベンチが後ろに引かれる音がした。
ウィリアムは息をつめて片足を少しずつ移動させたが、小さく叩くような音がし、白い縞模様がふるえるのを見て、凍りついた。
ちくしょう、スカンクが足踏みをしている。
ウィリアムは、それがスカンクの攻撃の前兆だと聞いていた。
それを話してくれた人々のなさけない状態は、経験に基づいた話ということが明らかだった・・・

居酒屋の中から、ドアに向かって足音がした。
誰かが調べに出てくるのだ。
なんてこった。もし立ち聞きしているのを見つかったら・・・
ウィリアムは歯ぎしりをした。
この仕事は、見られてはいけない。自殺的だが、動いて隠れなければ。
でももし隠れても、その後は?
スカンク臭にまみれていては、ロジャーズの仲間には戻れない。
でも・・・

居酒屋のドアがあいて、すべての考えは放棄された。
ウィリアムは、反射的に建物のかげに突進した。
スカンクも反射的に行動したが、ドアが開いたのに驚いて、目標を変えた。
ウィリアムは枝につまづいて、投げ捨てられたゴミの山にばったり倒れたが、その時背後で夜のしじまを引き裂く絶叫が聞こえた。

ウィリアムはむせたり、咳をしたりしながら、何とか遠ざかるまで息をしないように努力をした。しかしついに必要にかられてあえぎ、「臭い」という概念を越える何か他の表現をするしかない物質で、肺の中が満たされてしまった。
むせ、唾を吐き、目は焼けるようで、刺激によって涙が止まらず、ウィリアムは道端の暗がりに倒れ込んだ。
その場所から彼は、スカンクが怒りながら立ち去り、スカンクの被害者が居酒屋の階段に倒れて、この上ない苦痛を訴えているのを目撃することができた。

ウィリアムは、それがヘイルでないといいと思った。
スカンク臭まみれの男を逮捕して移送する実際的な困難さを考えたからではなく、今回の不幸に加えてさらにこの上首つりにされるというのはひどすぎる、という人道的な理由からだ。

被害者はヘイルではなかった。様子を見るために入口から突き出した人々の間から洩れる明りに照らされて、亜麻色の髪が光るのを見てわかった。人々の頭は、すぐ引っ込められた。
どうすればいいのか、議論し合う声が聞こえた。
酢だ。そうだそうだ、酢が要るんだ、どこにあるんだ、という声だ。
被害者は少し回復し、草むらに這いずりこみ、激しく吐いていた。
その事実と、周囲にただよう臭気は、他の男たちにも吐き気を催させ、ウィリアム自身も胃の中身がせりあがってくるのを感じたので、鼻をつまんでなんとかしのいだ。

被害者の友人たちが出てくるまでには、ウィリアム自身は換気ができたが、凍えてしまった。被害者は、牛が追われるようにして、友人たちに連れられていった。誰も彼に触ろうとはしなかったのである。
居酒屋は、空になった。
誰もこの空気の中では、それ以上飲んだり食べたりしたくなかったのである。
彼は、居酒屋の主人が看板の横で燃えていた松明をはずし、罵りながら天水桶の中につっこんで消すのを聞いた。

ヘイルは、おやすみと言った。教養があることがわかる発音は、目立った。
そしてフラッシングの方へ向かって歩いて行った。そこで宿をとるつもりなのだ。
ロジャーズは、道端に居残った。彼の方は毛皮のコートのおかげで、星明りでもウィリアムに見分けがついた。そして手下を周りに集めていた。他に誰もいなくなってから、ウィリアムは合流した。

「いいか?」とロジャーズは言った。「全員いるか?よし、行こう。」
そして何も知らない獲物を追って、ひと塊りになって道を進んでいった。

******************

一行は、水面の向こうに炎が上がっているのを見た。
町が燃えているのだ。
イースト川のあたりが燃えているのだが、風が吹いていて、炎は広がっていた。
ロジャーズの手下たちは、興奮していた。
反乱軍の支持者たちが町に火をつけたのか?
「酔っ払った兵士達かもしれん。」とロジャーズは言った。その声はむっつりしていて、無感情だった。
ウィリアムは、空が赤く燃えているのを見て、吐き気がした。
捕虜は、静かにしていた。

一行は(ロジャーズに命令を出している)ハウ将軍を、やっとのことで町の外にあるベックマン・ハウスの司令部で見つけた。将軍は、煙と睡眠不足と骨の髄までの怒りで、目を赤くしていた。そして執務室にしている図書室にロジャーズと捕虜を入れ、ウィリアムが正装しているのをちょっと見て、驚いた様子で寝に行くように言った。

フォートナムは、屋根裏部屋にいた。
窓から町が燃えるのを見ていた。
火事は、手が出せる状況ではなかった。
ウィリアムは、彼の横に立った。
奇妙なむなしさ、なんだか非現実的な感じがした。
素足に床の暖かさを感じはしたが、肌寒かった。
ときどき、火花が噴水のように吹きあげた。何か燃えやすいものに火がついたのだ。
でもこの距離から眺めると詳細はよくわからず、空を背景に赤く燃えていることしかわからなかった。
「住民は、俺たちを非難するよな。」
少しして、フォートナムが言った。

******************

翌日の昼になっても、空気には煙の臭いが強く残っていた。

ウィリアムは、ヘイルの両手から目を離すことができなかった。
ヘイルはあらがわずに後ろに手をまわしたが、兵士がそれを縛ると、ひとりでに握りこぶしになっていた。
指をしっかり握りしめていたので、ヘイルのこぶしは白くなっていた。

身体は嫌がっているんだ。とウィリアムは思った。気持ちはあきらめていても。
ウィリアム自身の身体は、ここにいることを嫌がっていた。
彼の肌は、馬がハエを嫌がるようにぴくぴくしていた。
腸は、ヘイルに共感して引きつけたり伸びたりを繰り返していた。
首つりになった人間は、洩らすと聞いているが、ヘイルもそうなのか?
そう考えて、顔に血が上り、ウィリアムは下を向いた。

声がして、顔をあげた。
ムーア大尉がヘイルに、何か言うことがあるかと聞いていた。
ヘイルは、うなずいた。
明らかに、彼は覚悟ができているのだった。

ウィリアム自身も、覚悟ができているべきだとはわかっていた。
ヘイルはこの2時間、ムーア大尉のテントで、家族に手紙を書いていたのだ。
一方この処刑に集まった男たちは、片足からもう一方へ体重を移動しながら待っていた。
ウィリアムは、全然覚悟ができていなかった。

何がちがうんだ?
人が死ぬのは、見てきた。
何人かは、ひどい死に方だった。
しかしこうやって事前に準備され、正式に、ぞっとするほど文明的に、すべてがこれから差し迫った恥ずべき死に向かって計画されているとなると・・・熟考。それだ。ひどい熟考。

「やっとだ!」
クロウウェルが耳元でつぶやいた。「急いでくれ。俺は腹が減った。」

ビリー・リッチモンドという若い黒人の兵卒が、木にロープを結びつけるために梯子を登った。
彼は降りてきて、将校たちにうなずいた。
ヘイルが梯子を登り、軍医が彼を固定した。
輪が彼の首にまわされた。
太いロープだ。
新しいものに見える。
新しいロープは、伸びるんじゃなかったか?
まぁ、梯子の高さはあるが・・・

天候は穏やかなのに、ウィリアムは、豚のように汗をかいていた。
目をつぶったり、逸らせたりはできない。
クロウウェルが見ている。
ウィリアムは、首のまわりの筋肉を引き締め、ヘイルの両手に注目をした。
男の顔は穏やかだが、指はどうしようもなく痙攣していた。
それらが上着のまわりに、かすかな濡れた染みを作っていた。

梯子がはずされ、ヘイルは落ちる時、驚いたような「ウーフ!」という声を出した。
ロープが新しいためか、首はきれいに折れなかった。
ヘイルがフードを拒否したため、目撃者たちは死ぬまでの約15分間、彼の顔を見ていなければならなかった。
ウィリアムは、緊張のあまり笑いたくなるのを堪えた。
青い目が破裂するかのように飛び出し、舌が突き出した。
驚いているように。ヘイルはびっくりしているように見えた。

処刑に集まったのは、少人数だった。
ウィリアムは、リチャードソン大尉が少し離れたところにいるのを見た。
彼は処刑を、切り離された非現実的なもののように見ていた。
まるでウィリアムの視線に気づいたかのように、大尉が鋭く彼の方を見た。
ウィリアムは、目を逸らした。

次は、現代のロジャーとブリアナの章です。
お楽しみに!

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