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2010年9月25日 (土)

An Echo in the Bone 骨の中のこだま12

ブリアナがロジャーの車の音を聞いたのは、もうほとんど夕暮れ時だった。
彼女は外へ駆け出し、まだロジャーが車から完全には出ないうちに、彼のの両腕の中に飛び込んだ。
彼の方も、質問をするような時間の無駄遣いはしなかった。
ブリアナを情熱的に抱き締め、もう言い争いは終わりだと、はっきりさせるようなキスをした。
お互いが詳しい点について誤りあうことなんて、後回しにできる。
この瞬間、ブリアナは何に対しても心を開き、彼の腕の中で無重力に感じ、彼のにおいを感じていた。ロジャーは、陽にあたっていないときでも、いつもかすかに太陽で暖められた肌の匂いがしていたが、それに加えて今はガソリンと埃と古い本でいっぱいの図書館のにおいがした。

「よく、女性は匂いでは夫を見分けられないというけれど、」と、ブリアナはしぶしぶ地上に足をつけながら述べた。「そんなの、嘘よ。私は地下鉄キング・クロス駅のど真ん中で、真っ暗闇だって、あなたがわかるわ。」
「僕は、今朝風呂に入ったんだけどね、臭うかい?」
「ええ、あなたは大学に泊まったのね。あそこで使っているあの嫌な強力洗浄石鹸の匂いがするわ。」とブリアナは鼻にしわを寄せて言った。「あれのせいで、肌が剥けないのが不思議よ。それに、あなたは朝食にブラック・プティング(ブラッド・ソーセージ)を食べたわ。つけ合わせは、焼きトマトよ。」
「その通りだ、お嬢さん。」ロジャーは微笑みながら言った。「それとも、名犬リンチンチンかい?今日は小さい子を助けたり、悪者のアジトを突き止めたりしたのかい?」
「そうね、そうとも言えるわ。」ブリアナは家の裏手の丘の上の方を見上げた。そこには円塔が黒く長い影を落としていた。「でも、もっと深入りするのは、お巡りさんが町から帰ってくるまで待った方がいいと思ったのよ。」

名犬リンチンチンについては、こちら→ リンチンチンについて
お巡りさんって、ここではオックスフォードに行っていたロジャーのことです。
やっと仲直りできて、よかったね。という方は、クリックしてまた戻ってきてください。

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頑丈な山歩き用の杖と懐中電灯で武装して、ロジャーは円塔へ近づいた。
怒っていたが、注意深く行動した。
その浮浪者がもしそこにいても、きっと武装はしていないだろう。
でもブリアナはキッチンのドアの所にいて、電話をコード一杯に伸ばして持ち、9を2つすでにダイヤルしてある状態で待機していた。
彼女は一緒に来たがったが、ロジャーは1人が子どもたちと一緒にいるべきだと説得した。
それにしても、彼女が背後で頑張っているというのは、心強い。
ブリアナは、背が高く、筋肉質な女性で、肉体的な暴力に屈するようなタイプではない。

円塔のドアは、ひんまがっていた。
もともとの革でできた蝶つがいは、ずっと前にボロボロになって、安っぽい鉄のものに換えられていたが、それも錆びついていた。
ドアは、まだ枠には着いていたが、かろうじてだった。
ロジャーは、掛金を持ちあげ、重くてささくれだった木のドアを、床にこすらないように持ちあげて、内側に動かした。

外はまだ十分明るかった。真っ暗になるまでに、あと30分はあるだろう。
しかし円塔の内側は、まるで井戸の中のように真っ暗だった。
ロジャーは懐中電灯で床を照らし、埃の積もった石の床に、何かを引きずった新しい痕跡を見つけた。
それじゃ、誰かここにいた、ということだね。
ジェムはドアを動かせるかもしれない。でも子どもたちは、大人と一緒でなく円塔に入ってはいけないことになっていた。そしてジェムは、誓って入っていないと言っていた。

「もしもーし!」とロジャーは叫んだ。
上の方で、びっくりした何かが動いた。
彼は反射的に杖を握りしめたが、はばたきとキーキー鳴く声が聞こえ、すぐに何だかわかった。コウモリだ。
円錐形の屋根の下に、ぶらさがっている。
ロジャーは、床の上を懐中電灯でぐるりと照らし、壁のそばに何枚かの染みが付いたくしゃくしゃの新聞を見つけた。
彼は1枚拾い上げ、においを嗅いだ。
古いけれど、魚と酢の臭いはわかった。
(おそらくフィッシュ アンド チップスがくるまれていたのだ。)

ロジャーはそもそも、ジェムがノクレヴィーについて、作り話をしているとは思っていなかった。
しかし、ここを最近人間が占拠していたという証拠を見て、怒りが新たになった。
誰かが勝手に彼の所有物に入り込み、潜んでいたというだけでなく、息子を脅したということなのだ・・・
ロジャーは、その浮浪者がまだここにいるといい、と思いたい所だった。何かそいつに言ってやりたい。

しかし、そいつはここにいなかった。
円塔の上の階には、常識のある者は誰も行かない。
板は半分腐っている。目が慣れると、上の方に開いた窓からかすかな光が入ってくるので、板に開いた穴を見ることができた。
ロジャーには何も聞こえなかったが、確かめたいという気持ちに急かされて、円塔の内側をとりまく狭い石のらせん階段を登り始めた。もちろん石に体重を預ける前に、一つひとつの段がゆるんでいないか確かめながら。

ロジャーは、一番上の階に登り、沢山のハトたちをびっくりさせた。
ハトたちは、パニックに陥り、まるで羽でできた竜巻のように塔の内側を羽や糞を落としながら飛び回り、窓を見つけて出て行った。
ロジャーは、ハトたちがめくら滅法彼の顔の前を通り過ぎていく間、どきどきしながら壁に身体を押しつけて立っていた。
何かが(ドブネズミか、イエネズミ、ハタネズミかもしれない)彼の足の上を走り抜け、反射的に身をすくめたので、うっかり懐中電灯をとり落とす所だった。

円塔は、活気に満ちている。よろしい。
上の方にいるコウモリは、下での大騒ぎに居心地悪げに動き回っていた。
しかし、侵入者の気配はない。人間にしろ、そうでないにしろ。

石段を降りながら、ロジャーは頭を出してブリアナにすべて大丈夫だという信号を送った。
それからドアを閉めて、家へ向かって丘を下っていった。
下りながら、埃とハトの羽を衣服から払った。

「新しい掛金と南京錠をつけるよ。」と彼は、ブリアナが夕食の支度を始めるのを見ながら、古い石の流しにもたれて、そう言った。
「あいつが戻ってくるとは、思えないけどね。たぶんただの旅行者だよ。」
「オークニー地方から、というわけね?」
ロジャーは、ブリアナが安心したという確信があったが、まだ彼女の眉の間には、心配のしわが刻まれていた。
「そこがノクレヴィーの民話のふるさとだと言ったわよね。」
彼は肩をすくめた。
「たぶんね。でも、きみは書かれた民話を見つけたよね。ノクレヴィーの話は、ケルピーや妖精ほど一般的じゃない。でも、印刷されたのは誰でも読むことができる。(だからオークニー地方の人以外でもノクレヴィーの話を知っている可能性がある。)おっと、それは何?」
ブリアナがバターを出そうと冷蔵庫を開けた時、ロジャーは棚にあるシャンペンの瓶の金属箔のラベルがきらめいているのを目にとめた。
「あら、これ?」ブリアナは、彼を見た。
微笑もうとしているのだが、目にはいくばくかの不安も宿していた。
「あの、私、仕事についたの。だから・・・お祝いをしましょうか?」
ためらいがちな問いかけに、ロジャーは心から打ちのめされ、ひたいを叩いた。
「なんてこった!君に聞くのを忘れていたよ!すばらしいよ、ブリー!もちろん、君が大丈夫とはわかっていたよ。」彼は微笑み、自分に出来る限りの暖かさと確信をこめて言った。「これっぽっちも、疑ってなかったよ。」

ロジャーは、ブリアナの身体から緊張が抜け、顔が輝くのがわかり、自分自身も和やかな気持ちになった。
この喜ばしい気持ちは、彼女があばら骨が折れるほど彼を抱きしめ、その後のとても素晴らしいキスの間続いた。
しかし彼女が元の位置に戻り、フライパンを取り上げて、慎重にさりげなさを装って尋ねた時に終わった。
「で、あなたはオックスフォードで、探していたものを見つけたの?」

「そうだね。」彼の返事は、しわがれ声になっていた。
ロジャーは、咳払いをして、もう一度やってみた。
「そうだね。少しは。ちょっと、夕食は少し待てない?どう?僕は先に君に話をした方が、食欲が増すと思うんだ。」
「もちろんよ。」ブリアナはゆっくりそう言って、フライパンをもとに戻した。
彼女の眼はロジャーに釘付けだった。
興味を持って。そして少しおびえて。
「子どもたちは、あなたが帰る前に食事を済ませたわ。だからもし、あなたが腹ペコでないなら・・・」

ロジャーは、腹ペコだった。
戻ってくる途中で、昼食をとるためには止まらなかった。
胃袋はぺしゃんこだった。
でも、そんなこと、どうでもいい。
彼はブリアナに手を差し伸べた。
「外に出よう。夕暮れが素晴らしい。」
それに、彼の話を彼女が悪くとったとしても、屋外にはフライパンはないのだ。

さあ、いよいよロジャーがオックスフォードに何をしに言ったのかがわかります。
でも、これからが難しいのよね。
私がいろいろ間違えていても、ごめんなさい。
絶対翻訳が出たら、読んでくださいね。

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