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2010年10月24日 (日)

An Echo in the Bone 骨の中のこだま18

第3部 私拿捕船 Privateer

820ページ中、234ページまできました。
まだまだ楽しめるぞ!

ウィリアムの章です。


1776年10月3日 エリスメア伯爵よりドロシア・グレイ嬢へ

『親愛なるいとこへ』
この手紙を、郵便配達に間に合わせるために、大急ぎで書いている。
僕は、リチャードソン大尉のために、もう一人の将校といっしょにちょっとした旅行に出た所だ。
今のところ、何のための任務なのかは、よくわからない。
君は、アダム兄さん宛てに書いてくれればいい。
僕は、彼とコンタクトをとり続けるように努力する。
君から言われたことは、出来る限りやってきたし、これからも君のために尽くそう。
僕の父と君のお父さんに、僕からよろしくと伝えてくれ。
また、尊敬していると。
それから愛情を。
そしてこの最後のやつは、大部分が君に捧げられているんだよ。

1776年10月3日 エリスメア伯爵よりジョン・グレイ閣下へ

『おとうさんへ』
よく考えた結果、僕はリチャードソン大尉の提案を受け入れることにし、ある上官の通訳としてお供をし、ケベックへ行くことにしました。僕のフランス語が、それに充分だと判断してもらえたからです。
ハウ将軍は、同意してくれました。
僕はまだランドル・アイザック大尉には会っていませんが、来週アルバニーで合流する予定です。
いつ帰ってくる予定なのか、次に手紙を書く機会がいつなのかもわかりませんが、可能な限り連絡をします。
それまでは、愛情をこめて僕を思っていてください。
あなたの息子、ウィリアムより

1776年の10月末

ウィリアムは、デニス・ランドル・アイザック大尉をどう考えたらよいか、よくわからなかった。
表面上は、どの隊にもいる、愛想が良くて目立たない男だった。
30歳前後、カードをやるときは礼儀正しく、冗談がわかり、浅黒いハンサムで、開けっぴろげで、頼りになった。
それに旅行の連れとしては大変に望ましい相手で、道中を盛り上げる話が好きで、低俗でみだらな詩や歌に関する深い知識も備えていた。

ただ、彼は自分のことを話さなかった。
ウィリアムのこれまでの経験では、ほとんどの人はなによりも沢山自分の話をする。
あるいは少なくとも、最も頻繁にその話をする。

ウィリアムは、何回か試しにつついてみた。
自分自身の誕生に関するかなり劇的な話を提供してみたが、それに対して返ってきたのは、わずかな事実のみだった。
ランドル・アイザックの実父は、英国陸軍騎兵隊だったが、デニスが生まれる前にハイランドでの戦闘で死亡し、母親は1年後に再婚したのだった。

「僕の義理の父親は、ユダヤ人でした。」と彼はウィリアムに語った。
そして「金持ちの。」と、皮肉な微笑みを浮かべて付け加えた。
ウィリアムは、親しげに頷いた。
「貧乏なのより、いいですね。」
そしてそれ以上は触れなかった。
それは十分ではなかったけれど、なぜランドル・アイザック大尉が槍騎兵や火打ち石軽小銃兵など、兵士としての栄光を追い求めずに、リチャードソン大尉の下で働いているかを、ある程度説明していた。
金で地位を買うことはできるが、隊の中で暖かく受け入れられることを保証してはくれないし、縁故の方が『利害関係』よりも有効なある種の事柄にはなおさらだからだ。

ウィリアムの頭に、ふと浮かんだ。
なぜランドル大尉は、リチャードソン大尉の裏任務に没頭し、彼自身の持っている人間関係やチャンスに対して背を向けるのだろうか。
しかしすぐにそのことは、後で考えることにした。

ランドル大尉、父親はハイランドで死亡・・・
ウィリアムの新しい上官は、ちょっと気になる存在です。
「うーん、もっと知りたい。」という方は、ぜひ次をクリックしてから ≪続き を読んでみてください。

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「すごい・・・」とデニスは見上げながらつぶやいた。
2人は、ケベックの砦へ通じる道の途中、セントローレンス川の河岸で、馬を操っていた。
そこから2人は険しい崖を見ることができた。
その崖は、17年前にウォルフの隊が砦とケベック市をフランスから奪うために登ったものだった。

「僕の父はあの崖を登りました。」とウィリアムは、さりげなく聞こえるように注意しながら言った。
ランドル・アイザック大尉は驚いて、頭を彼の方に向けた。
「本当に?つまり、ロード・ジョンということだろう?ロード・ジョンは、ウォルフといっしょにアブラハム平野で戦ったのか?」
「ええ。」
ウィリアムは、尊敬の気持ちを込めて崖を見つめた。
その崖は、若木が沢山生えてはいたが、崩れやすい泥板岩で覆われ、葉の間から暗く口をあけた裂け目や角ばった割れ目を見ることができた。
暗闇で高度を目測し、よじ登るだけでなく、大砲などのずべての装備をあの高さまで持ち上げることを考えると!

「父は、始まるとほとんど同時に終わったと言っていた。激しい一斉射撃が一回あっただけだ。でも戦場まで登ることは、彼がこれまで経験した中でも一番ひどかった。」
ランドル・アイザック大尉は、尊敬したようにつぶやいた。そして手綱を取り上げる前に、少し躊躇した。
「君の父上は、サー・ガイを知っておられるかな?」と彼は言った。
「その話を耳に入れたら、サー・ガイはとても喜ばれるだろう。」

ウィリアムは、自分の相手をじっと見た。
絶対にウィリアムは、ロード・ジョンがサー・ガイ・カールトンという北アメリカの司令官を知っているとは話していない。まぁ、実際には知っているのだが。
ウィリアムの父親は、みんなを知っている。
その単純な事実を考えた時、ウィリアムは突然気付いたのだ。
この任務において、何がウィリアムの本当の役割なのかということをだ。
彼は、ランドル・アイザック大尉にとっての『名刺』なのだ。

ウィリアムがフランス語が上手だというのは、事実だ。
ウィリアムにとって、言語の習得は簡単なのだ。
そして、ランドル・アイザック大尉はフランス語の初心者だった。
リチャードソン大尉は、そのことについては真実を語っていた。
信用できる通訳者というものは、持つべきものなのだ。
しかしランドル・アイザック大尉がウィリアムに手放しの興味を示すのを見ているうちに、ウィリアムは遅まきながら、大尉が彼よりもロード・ジョン・グレイに特別な興味を持っているという事実に気付き始めた。
ジョン・グレイの軍歴のハイライトや、どこで働いていたのか、誰のために、あるいは誰といっしょに任務についていたのか、誰と知り合いなのか。

このことは、すでに2回起きていた。
2人は聖ジーン砦とシャンブリー砦の司令官に呼びだされていた。
そしてどちらの場合も、ランドル・アイザック大尉はさりげなくウィリアムがロード・ジョン・グレイの息子であることに触れて、信用を獲得していた。
その結果、形式的な歓迎はたちまち暖かいものに変わり、その後素晴らしいブランデーに盛り上げられて思い出話や会話に満ちた、長く夜遅くまで続く夕べへと続いていったのだ。
その間中、ウィリアムと司令官達がほとんど話していた。
そう、そのことにウィリアムは今気付いた。
ランドル・アイザック大尉は、座って聞いているだけだった。
彼のハンサムで、上気した顔は、賞賛に満ちた関心によって輝いていた。

やれやれ、とウィリアムは考えた。
やっと気付いたのだが、ウィリアムはそのことをどう考えたらよいのかわからなかった。
まず、何が起こっているのか明らかにできたことを喜んだ。
一方、彼は単にその縁故で選ばれたのであって、彼自身の徳性によるものではない、という事実にがっかりした。

まあ、控えめに言えば、知っているということはいいことだ。
わからないのは、ランドル・アイザック大尉の本当の任務が何なのか、ということだ。
彼は単に、リチャードソン大尉のために情報を集めているだけなのか?
それとも、口にはされていない、別の任務があるのか?
大尉はかなりしばしば、自分の何かをしに、単独行動に出かけていた。
そのときはさりげなく、あるプライベートなこと、それには彼自身のフランス語の能力で充分なあることをしに行く、と言っていた。
ウィリアムにリチャードソン大尉が語ったとてもわずかな指示によれば、2人はケベック市におけるフランス人居住者とイギリス人植民者の対立感情について調べているのだった。それはアメリカの反逆者たちの侵入や、大陸会議側の脅迫及びそそのかしに備えて、将来助けの手を伸べるため、という立場によるものだった。

ウィリアムが何を期待していたとしても、彼らの対立感情については、今や明らかだった。
この地域のフランス居住者たちは、サー・ガイの側についていた。
サー・ガイは北アメリカの政府指導者として、ケベック法を承認した。
それは、ケベック市民がカトリックであることを法律上認め、フランスにいるカトリック教徒との貿易を保護するというものである。
イギリス側はその法律に対し、明らかな理由で気分を害し、前年度の冬にアメリカ軍に市が攻撃された際に、サー・ガイからの軍隊派遣要請を無視した。

「あいつらは、気が狂っていたにちがいない。」とウィリアムは、砦の前の原っぱを横切るときにランドル・アイザック大尉に言った。「あいつら、というのは、昨年ここを占拠しようとしたアメリカ人のことだ。」
2人は、今や崖のてっぺんに到着していた。
砦は、彼らの前の原っぱに建っていた。
それは、穏やかで、堅牢だった。秋の日差しの下、とても堅牢に見えた。
天気は暖かく、美しかった。
大気は、川と森の豊かな大地の香りに、生き生きとしていた。
原っぱとセントローレンス川の土手を縁取る木は、入り込めないほど密に生い茂り、金色を深紅の紅葉に燃え上っていた。川面の暗さと、信じられないくらい深い青の広々とした10月の広い秋空に浮かび上がるのを見て、ウィリアムには全てが別世界の感覚のようで、金色の葉が燃え上る中世の絵画の中を乗馬している気分になった。

しかし、その美しさをさらに超越して、ウィリアムはその場所が未開の地であることを感じた。
それは、彼自身の骨が透明になったかのように明白な感覚だった。
陽はまだ暖かかったが、毎日黄昏がくるたび鋭くなっていく歯を使ってに冬の寒さが噛み付いてくるのだった。
この原っぱが、たった数週間後には、すべての生き物に対して無愛想で白く苦い氷に覆われているのだろう。
よい天気という条件下で、たった2人の乗り手であっても、これまで200マイル(約300km)の北部の厳しい乗馬経験と物資調達の困難さから、悪い天候下での軍隊に対する物資の供給がどんなに大変かを直ちに理解した。

「もし狂っていなかったのなら、こんなことはしなかっただろう。」とランドル・アイザック大尉は彼の考えに口をはさんだ。彼もまた、兵士としての立場から状況を判断するため、少し手綱を引き締めていたのだ。
「しかし、あの軍隊をここに引き連れてきたのは、アーノルド大佐だ。あの男こそ、正気の沙汰じゃない。しかし、えらくすぐれた兵士だ。」
彼の声に賞賛の響きが感じられ、ウィリアムは大尉を興味深げに眺めた。
「彼を知っているのですね?」とウィリアムはさりげなく尋ね、ランドル・アイザック大尉は笑った。
「いうまでもなく。」と彼は言った。「こっちだ。」
彼は馬に拍車を入れ、2人は砦の門の方へ向かった。
大尉はまるで、驚き、半分さげすんだような表情を浮かべていて、まるで記憶の中に遊んでいるように見えた。数秒後、大尉は再び話し始めた。
「あいつは、やり遂げたかもしれん。つまり、アーノルドのことだ。市を占領したかも。サー・ガイは、特筆すべき軍隊はまったく持っていなかったのだ。もし計画通りにアーノルドが来ることができたら。そして必要なだけの火薬と弾を持っていたら・・・そしたら、話は違っていただろう。しかしアーノルドは、道案内に誤った人間を選んでしまったのだ。」
「ということは?」
ランドル・アイザック大尉は、突然慎重な顔つきになった。
しかし、まるで「だからどうなんだ?」と心の中で言ったかのように、肩をすくめた。
彼は今まで暗い森で何週間もキャンプ生活をした後の暖かい夕食、柔らかいベッド、清潔な敷布を待ち望んで、機嫌が良かった。
「陸路では、無理だった。」と彼は言った。
「軍隊を輸送する手段を考えて、水路で北へ向かう必要を感じたアーノルドは、厳しい旅を経験し、川や間の陸路を熟知している人間を探した。」と大尉は言った。
「その上彼は、その人間を見つけた。サミュエル・グッドウィンだ。」

「しかし、グッドウィンが英国支持者かも知れないという考えは、浮かばなかった。」と、アイザック・ランドル大尉はその世間知らずぶりに頭を振った。「グッドウィンは、私の所へ来て、どうするべきだろうかと相談した。だから私は教えてやった。そしてグッドウィンはアーノルドに自分が書いた地図を渡した。それは目的に沿って、注意深く書き直されたものだった。」

そして、地図はその目的を全うした。
方向を誤って記録し、目印を取り除き、無い所に通路を描くことによって、全く架空の地図になったのだ。
グッドウィンの道案内は、アーノルドの軍隊を荒野の中に深く迷わせ、何日もの間船と荷物を陸路で運ばせ、最終的には日程をひどく遅らせたため、ケベック市に着かないうちに冬に捕まってしまう羽目に合わせた。

ランドル・アイザック大尉は、笑った。
しかしその声には、後悔の響きがあるように、ウィリアムは思った。
「私は、彼が最終的にケベックに着いた、と聞いて驚いた。
 いろいろなことがあったが、彼は船大工にも騙されたんだ。
 こうなってくると、純粋に無能力という問題だ。政治的問題ではない。
 もっとも、最近じゃ区別をつけにくいがね。
 船はまだ新しい木材で作られていたので、隙間があったのだ。
 半分以上の船は、進水して数日もしないうちにバラバラになり、沈んでしまったのだ。」

「それはまさに地獄のようだったに違いない。」とランドル・アイザック大尉は、まるで独り言のように言った。
それから彼は背筋を伸ばし、頭を振った。
「しかし、男たちは彼に従った。彼の隊全員がだ。戻ったのは、1つの団だけだった。
 飢え、半分裸で、凍え・・・それでも全員彼についていった。」と大尉は感心して繰り返した。そしてウィリアムを横目で見て、微笑んだ。
「君の部下は、君について来るかね、将校さん、こんな状況で?」
「私は、部下をこんな状況で引きずりまわすよりは、もっと賢明な判断力があると信じたいですね。」とウィリアムは冷静に答えた。「結局アーノルドはどうなったのですか?捕虜になったのですか?」

「いいや。」とランドル・アイザックは考えながら言った。
彼は片手を上げて、砦の門を守る番兵に合図をした。
「そうはならなかった。彼がどうなったか、神のみがご存じだ。あるいは、神とサー・ガイの2人か。私はサー・ガイが教えてくれるといいと思っている。」

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