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2010年10月 1日 (金)

An Echo in the Bone 骨の中のこだま13

「僕は、旧聖スティーブンス教会に行ったんだ。」
彼らが家の外に出るとすぐ、ロジャーは唐突に話し始めた。
「ウェザースプーン博士と話すためにね。彼はその教会の司祭なんだ。それに、ウェイクフィールド叔父(ロジャーの育ての親、牧師)の友達だった。僕を子どもの頃から知っているんだ。」
ブリアナの手は、彼が話している間、彼の腕をしっかり握っていた。
ロジャーは敢えて、ちらりと見てみた。
彼女は心配そうだったが、希望と持っているようだった。
「そして?」
彼女はためらいがちに言った。
「それで、とどのつまり、僕も仕事についた。」
彼は、意識して微笑んだ。
「聖歌隊指揮者の助手だ。」

もちろん、そんなことは彼女が期待していたことではない。
ブリアナは瞬きをした。
それから、目が彼ののど元へ行った。
彼は、彼女が何を考えているか、手に取るようにわかった。

彼らが最初にインバネスへ買い物に出かける準備をしているときのことだ。
「それを着ていくつもりなの?」
ブリアナは、彼に躊躇しながら尋ねたのだった。
「そうだよ。なぜだい?染みでもついているの?」
彼は白いシャツの肩越しに見ようと、首を伸ばして振り返った。
染みがあったって、不思議はない。
マンディが、遊びをやめてロジャーに挨拶するために走り寄り、砂まみれの手で彼のズボンを汚していた。マンディを抱き上げてキスをする前に、少し砂を払ったのだが・・・
「そのことじゃないの。」とブリ―は言った。
彼女は唇をギュッとかみしめた。「ただちょっと・・・何というか・・・」
ブリアナは、喉をかき切るしぐさをした。
彼は手を、シャツの開いた襟元へ動かした。
そこにはロープによる傷跡がカーブを描いていた。
手触りでも明らかだった。
皮膚の下に、小さい小石でできた鎖があるかのような傷だった。
少しは薄れていたが、とても目立った。
「何てことないさ。」
彼女の眉が上がったが、彼はブリアナに向かって少しゆがんだ微笑みを浮かべた。
「でも、みんな、何て思うかしら。」
「たぶん、僕が自分で首を絞めてエクスタシーを求める男で、ある日やりすぎちまったんだ、と思うんじゃないかな。」

地元のハイランド人たちといっしょにいるうちに、彼はそれが他の人が想像できる限界なのだと思っていた。
信徒たちは外面上もっとふさわしいことを考えているかもしれない・・・
でも敬虔なスコットランド人の長老派教会員として、それ以上の面汚しなことは想像できないだろう・・・
(この辺、よくわかりません。ごめんなさい)

「あなた、ウェザースプーン博士に話したの?」
ブリアナは、少し考えて尋ねた。
「つまり、彼には知っておくべきだわ。」
「ああ、それは大丈夫。彼は知っている。でも僕は何も説明しなかった。それに彼も聞かなかった。」

「いいかい、ブリー」と彼はその最初の日に言った。
「どちらかを選ぶしかないんだ。僕らはみんなに真実をすべて話すか、何も話さないかだ。いや、出来る限り何も話さないかだ。そしてみんなが好きなように想像するに任せる。話をでっちあげるんじゃ、ダメなんだ。ボロが出る可能性が大きすぎる。」

ブリアナは、この考えが好きではなかった。
ロジャーは、彼女が目を横目で伏せたしぐさから、そのことがわかっていた。
でも彼が正しいのである。それは彼女もわかっていた。
彼女に顔に決意がみなぎり、彼女はうなずいた。その肩はこわばっていた。

もちろん、彼らはいくらかは嘘をいわなければならなかった。
特に、ジェムとマンディの存在を法律上正当化するために。
でも、それは70年代の後半のことだった。
合衆国にはコミューンがたくさん生まれ、ヨーロッパには錆びついたバスやおんぼろのバンに乗った自称『旅行者』という即席のグループがヨーロッパをうろついていた。
ロジャー達は、石の間を抜けた時、子どもたち以外にはほとんど何も携えてこなかった。
しかしブリアナは2つの手書きの出生証明書を少しの蓄えといっしょにポケットに縫い込み、下着の下に入れてきたのだ。
その証明書には、出生に立ち会った医者として、クレア・ビューチャンプ・ランドル医師のサインがあった。

「これは、家庭での出産の証明として使えるわ。」とクレアは、自分のサインの曲線を注意深く書きながら言った。
「それに私は、マサチューセッツ州に認定された医師なのよ、いえ、医師だったのよ。」
クレアは、少しゆがんだ微笑みを浮かべて言い直した。

サークル・ストーンを抜けて1979年へやってきたブリアナ達が、どのようにしてラリーブロッホを買い取ることができたのか、少しずつ明らかになってきました。
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「聖歌隊指揮者の助手」と、ブリーはロジャーをじっと見て言った。
彼は、深く息を吸った。
夕暮れ時の空気は素晴らしかった。澄んでいて、やわらかい。
ユスリカが沢山出てきてはいたが。
彼はあおいで顔の周りからそれらを追い払い、難問に立ち向かった。

「いいかい、僕は仕事をもらいにいったんじゃないんだ。僕は・・・僕は考えをはっきりさせるために行ったんだ。聖職者になることについて。」
彼女はこの言葉に凍りついた。
「そして?」と彼女は促した。
「こっちに行こう。」彼は優しく彼女を引き、再び動くようにした。「ここに立っていては、生きたまま食われちまう。」

彼らは野菜園を歩き、納屋を通り過ぎ、家の裏に広がる草原へ向かう小道に沿って歩いた。
ロジャーはすでに2頭の牛を搾乳しておいた。
ミリーとブロッサムだ。
彼らは夜に備えて休んでいた。
草の中に、おだやかに反芻している大きな姿が見えた。

「僕は君に、『ウェストミンスター信仰告白』について話したよね?」
それは、長老派教会にとって、カトリックの『ニカイア信条』と同じもので、正式に受け入れられている経典なのである。
「ええ、それで?」
「それで、いいかい?長老派教会の聖職者になるには、その『ウェストミンスター信仰告白』に書いてあることはすべて受け入れる、と誓わなければならないんだ。僕は、受け入れていたんだよ、以前には。」
ほとんど、聖職者になりかけていたのだ、と彼は思った。
彼がまさに聖職者になる前夜、スティーブン・ボネットという人物の姿を借りて、運命が邪魔をしたのだった。
ロジャーは、オクラコークの海賊の隠れ家からブリアナを助け出すために、すべてのものを投げ出すはめになったのだった。
そうしたことを、後悔しているわけではない・・・

ブリアナは、彼の傍らを歩いていた。
髪は赤く、手足が長く、虎のように優雅だ。
あんなにも簡単に、この彼女が彼の人生から永遠に消えてしまっていたかもしれないという思い、さらに彼はマンディを知ることがなかったかもしれない・・・

ロジャーは咳払いをし、気をそらすように傷跡に触れた。
「たぶん、僕はまだ受け入れていると思う。でも、確かではない。それを確かめなければならないんだ。」
「何が変わったの?」ブリアナは、興味深げに尋ねた。
「前は受け入れられたのに、今はできなくなったのは、何が原因なの?」
「神学予定説(宿命論)だ。」と彼は言った。「ある意味。」

まだ少し明るさが残っていたので、彼はブリアナの顔に少し皮肉っぽい驚きの表情が浮かんで消えるのが見えた。
それが単に質問に対する答えが予想外だったためか、それとも考えそのもののせいなのかは、彼にはわからなかった。
彼らは今まで、信仰に関して議論したことはなかった。
そのことについては、お互いにとても慎重だった。
でも少なくともお互いの信仰についての一般的な概要は熟知していた。

ロジャーは簡単な言葉で、神学予定説について説明をしていた。
それは、神によって決められている逃れられない運命ということでもなく、人が生まれる前からそれぞれの人生の詳細についてまで神が決めているという概念のことでもない。
確かに多くの長老派教会員は、世の中をそう見ているのだけれど。
それは救済に関することで、神はその救済へ向かう道を選んでくれるという考えだ。
(ここもよくわからない。)

「一部の人にとって、というわけよね。」とブリアナは批判的に言った。「神は、残りの人々を破滅させるってこと?」
多くの人々もそう考えるけれど、その印象に対して反駁するには、ロジャーよりもしっかりした考えを持った人が必要なのだ。
「これについて、とても沢山の本が書かれている。でも救済の基本的概念は、その救済が我々の選んだ結果ではないということだ。最初に仕掛けるのは神なんだ。誘いの手を差し伸べてくれると言ってもよい。人間が反応する機会を与えてくれるんだ。そして人間には、自由に選ぶ選択権がある。事実、」とロジャーは素早く付け足した。「長老派教会員になるのときに選択肢がないのは、イエス・キリストに対する信仰についてだけだ。その信仰なら、今も僕にちゃんとある。」
「いいわ。」とブリアナは言った。「でも、聖職者になるには・・・?」
「それもだ。たぶん。それで・・・ほら、これを見て。」
彼はふいにポケットに手を入れて、彼女に折りたたんだコピーを手渡した。

「僕は、本を盗まなければ良かったと思っている。」と彼は、軽薄に見せようとして言った。「もし僕が聖職者になるんだったら、という意味さ。大衆への悪い見本になってしまう。」
「あら、そう。」とブリアナは、読みながら上の空で答えた。
彼女は目を上げた。眉を片方寄せていた。
「ね、違っているだろ?」と彼は言った。
横隔膜の下のあたりが空っぽになった気がした。
「そうね・・・」ブリアナの目は、記事に戻った。
それから、まゆの間にしわが寄った。
少しして彼女は、蒼白になり、唾を飲み込みながら彼を見上げた。
「違っているわ。日付が違っているわ!」

ロジャーは、この24時間というもの彼を締めつけていた緊張が、少し緩むのを感じた。
自分は気が狂っているわけではないのだ。
彼は手を伸ばし、ブリアナはその手にウィルミントン・ガゼット紙からの記事のコピーを返した。
あのリッジのフレイザー家の人々に関する死亡記事だ。

「日付だけだ。」と彼は言って、タイプされた言葉のかすれた印刷の下に親指を走らせた。
「文章は・・・たぶん同じだ。君が覚えているのと同じかい?」
ブリアナは、自分の家族の過去を調べていたときに、同じ情報を発見したのだった。
『そしてそのことが、』とロジャーは考えた。『すべてを変えたんだ。ロバート・フロストさん、感謝するよ。』

ブリアナは、もう一度読むためにロジャーにもたれかかった。
一度、二度、そして確信するためにもう一度読んでから、彼女はうなずいた。
「日付だけよ。」と彼女は言った。
彼はその声に、自分のと同じ息苦しさを感じた。
「日付は・・・変わったわ。」
「そう。」と彼は言った。
彼の声は、奇妙で、しゃがれていた。
「僕が不思議に思い始めた時・・・君に話す前に、行って確かめる必要があったんだ。チェックしたかったんだ。だって、本の中にあった切り抜きは、間違っていたかもしれないから。」

ブリアナはうなずいた。
まだ少し青ざめていた。
「もし・・・もし私があの新聞記事を見つけたボストンの書庫にいったら、その記事も変わっていると思う?」
「僕は、そう思うよ。」
ブリアナは、彼の手の中の紙を見つめて、長いこと静かにしていた。
それから、彼の方をじっと見た。
「あなた、不思議に思い始めた時って言ったわよね。何が原因で、不思議に思い始めたの?」
「君のお母さんだよ。」

さあ、いよいよおもしろくなってきました!
宗教信条のところはよくわからなかったのですが、次はけっこうおもしろい。
さて、クレアはいったい何をしたのでしょうか?

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