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2010年10月

2010年10月31日 (日)

An Echo in the Bone 骨の中のこだま20

ロード・ジョン・グレイは、心臓発作を起こした兄ハルを見舞いに、クリスマスの朝ロンドンからフランスにやってきます。

彼は、間もなく夜明けだとわかっていた。
それを教えてくれるたのは、節々が痛むということと、懐中時計の小さなチャイムだった。
空には何の兆しもなかった。
煙突ふきのような色をした雲がロンドンの屋根を掃いているようで、道路は真夜中よりももっと暗くなっていた。というのは、すべての灯りが消えてから時が経ち、炉辺の火もほとんど燃え尽きていたからだ。

彼は夜どおし起きていた。
しなければならないことが、いろいろあった。
ドーバーの乗合馬車に乗る前に、家に帰って数時間睡眠を取りたかった。
しかし自分自身が安心するためには、もう一度ハルに会わずに行ってしまうわけにいかなかった。

アーガス・ハウスの窓には、灯りが見えた。
カーテンが引かれていたが、かすかな明かりが外の玉石を照らしていた。
雪がたっぷりと降っていたが、まだ地面には積もっていなかった。
乗合馬車が足止めをくらう可能性は大きかったし、ぬかるんだ道路にめりこんだりして遅れることは確実だった。

乗合馬車といえば・・・彼の心臓は、車寄せに停まっているみすぼらしい馬車を見て、ドキリと跳ねた。あれは医者の馬車に違いない。
ドアを叩くとすぐに、服を着ている途中の召し使いが出てきた。
彼は寝巻をズボンの中に急いでたくし入れていた。
ジョンを見て、その男の心配そうな顔が、少しリラックスをした。

「公爵は・・・」
「夜中はよろしくありませんでしたが、今は良くおなりになりました。」
とその男、そうそうアーサーという名だった、は遮った。
それから、彼を入れるために下がって、ジョンの肩からコートを取って、雪を振るいおとした。

彼はうなずいて、案内を待たずに階段の方へ向かった。
そして医者が降りてくるのに出会った。
医者は痩せた灰色の男で、いやな匂いのする黒いコートを着て、カバンを手に持っていた。
「兄は、どんな具合ですか?」とジョンは尋ねた。
そして、医者が踊り場に来ると、袖を掴んだ。
医者は後ろに下がり、身構えたが、壁の蜀台に照らされたジョンの顔を見て、ハルと似ていることに気付き、逆立った羽毛をなでつけた。

「いくらかは、よくなりました。私が放血をしました。3オンスです。その結果、息がおだやかになりました。」
ジョンは袖を離し、階段を上った。
ジョン自身の胸が苦しくなった。
ハルの続き部屋へのドアは開いていたので、ジョンはすぐに中へ入り、おまるを持って出てきた召し使いを驚かした。おまるは蓋がしてあり、大きく華やかな花が美しく刺繍してある布で慎重にくるまれていた。
ジョンは、謝罪の意を込めて頷きながら彼女の脇を通り、ハルの寝室に入った。

ジョンとハルについて詳しくは、『死者から届いた日記』をお読みください。
また、An Echo in the Bone 骨の中のこだま2 でも触れています。
ハル、お久しぶり!のクリックを!

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2010年10月28日 (木)

An Echo in the Bone 骨の中のこだま19

場面はロンドン。ロード・ジョンへ焦点が移ります

1776年12月24日 ロンドンにて

ロード・ジョンは、考えた。
金持ちの奥さんというものは、がっちりした生き物なんだと。
若い頃充分に食べなかった埋め合わせの食欲のためなのか、地位が下がるのを警戒してなのか、彼女たちのほとんどは、贅肉がたっぷりとついていた。

でも、ネシーはちがう。
彼は、ネシーのスリップの薄いモスリン越しに、彼女の身体の線を透かして見ることができた。
うっかりベッドに寝ていたところを起こしてしまったので、彼女が上着をはおるために暖炉の前に立っていたからだ。
彼が最初に出会った頃と比べても、ただの1オンスの余計な贅肉もそのやせた骨組みについてはいなかった。あのとき彼女は14歳だと言っていたのだが、彼は11歳にちがいないと思っていたのだ。

今ネシーは30歳を過ぎたころだと思うが、いまだに14歳に見えた。
彼はそのことに微笑み、彼女もガウンの紐を結びながら微笑み返した。
微笑むと、彼女は少し年をとって見えた。
それは、歯が何本か抜け、根元が黒っぽくなっていたからだ。

がっちりとしてないとすれば、それはネシーにそうなる能力がないからだ。
彼女は砂糖を愛し、あっという間に砂糖漬けスミレやターキッシュ・デライトなどを一箱食べてしまう。それは多分、若い頃スコットランド高地地方で飢えていた時代の埋め合わせなのだ。
ジョンは、彼女に砂糖漬けのプラムを1ポンド持ってきた。

「私はそれだけの安物ってわけね?」と彼女はかわいらしく包んだ箱を取り上げながら、眉を上げた。
「いいえ、まったく。」とジョンは安心させた。「これは単に、お休み中のところをお邪魔をしたおわびですよ。」
この言い訳は、即席のものだった。
実際ジョンは、ネシーが働いているとおもっていたのだ。
もう夜の10時過ぎだからだ。

「いいのよ。今日はクリスマス・イヴですもの。」と彼女は、ジョンの口にしなかった質問に答えて言った。
「家庭がある男はみんな、家庭にいるんだわ。」と彼女はあくびをし、ナイト・キャップをとって、黒っぽい豊かな髪に指を通して、ふわふわにした。

「しかし、ここにも少しは客がいる。」とジョンは鋭く言った。
遠く2階下から歌声が聞こえてきたし、通り過ぎてきたとき、広間は人でいっぱいだった。
「おぉ、そうなのよ。やけっぱちの人たちね。彼らはメイベルにまかせてきたわ。見たくないから。かわいそうに。クリスマス・イヴに来るような男は、女性が欲しいわけじゃないのよ。そばに座る火、いっしょに座る人間が恋しいのよ。」
ネシーは、手を振って座り、がつがつとプレゼントからリボンをむしり取った。

「なら、君にハッピー・クリスマスと言おう。」とジョンは言い、感嘆をこめてネシーを見た。
彼女はプラムを1つとって口に投げ込み、目を閉じて、恍惚にため息をついた。
「むーん。」と彼女は言って、飲み込む前に次のを放り込んで噛み始めた。
このコメントが心からの響きを持っていたので、ジョンはネシーが感傷から現実に返ってきたことがわかった。

ジョンはもちろん、今日がクリスマス・イヴだとは知っていた。
しかし今日の長く寒い一日の間中、そのことを脇へ置いておいた。
今日は1日中雨降りで、凍えるような冷たい針のような雨に混じりときどき雹も吹きなぐり、明け方直前にミニー(兄の妻)の召し使いにアーガス・ハウス(兄の家)に来るよう起こされて以来ずっと、ジョンは冷えきっていたのだ。

ネシーの部屋は小さかったがエレガントで、居心地のよい眠りの香りがした。
ベッドは広く、とても装飾的なピンクと黒の『シャーロッテ女王』のチェックで縁取られた羊毛のカーテンが下がっていた。
疲れていたし、寒かったし、空腹だったので、ジョンはその暖かく、誘うような空間の引力を感じた。そこはおまけにガチョウの羽の枕と、キルトと、清潔で柔らかいシーツに覆われているのだ。
もし、一晩いっしょにベッドに寝たいと頼んだら、ネシーは何と思うだろうか?

『そばに座る火、いっしょに座る人間』。
そう、ジョンにはそれがあった。
少なくとも、今は。

ロード・ジョン・グレイは、少年の頃からジェイミーに恋する地位あるハンサムなイギリス紳士で、ジェイミーの息子ウィリアムを、訳あって自分の息子として育てているのです。
ネシーは彼の友人の娼婦で、諜報活動をしていたジョンの、よき情報提供者です。

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2010年10月24日 (日)

An Echo in the Bone 骨の中のこだま18

第3部 私拿捕船 Privateer

820ページ中、234ページまできました。
まだまだ楽しめるぞ!

ウィリアムの章です。


1776年10月3日 エリスメア伯爵よりドロシア・グレイ嬢へ

『親愛なるいとこへ』
この手紙を、郵便配達に間に合わせるために、大急ぎで書いている。
僕は、リチャードソン大尉のために、もう一人の将校といっしょにちょっとした旅行に出た所だ。
今のところ、何のための任務なのかは、よくわからない。
君は、アダム兄さん宛てに書いてくれればいい。
僕は、彼とコンタクトをとり続けるように努力する。
君から言われたことは、出来る限りやってきたし、これからも君のために尽くそう。
僕の父と君のお父さんに、僕からよろしくと伝えてくれ。
また、尊敬していると。
それから愛情を。
そしてこの最後のやつは、大部分が君に捧げられているんだよ。

1776年10月3日 エリスメア伯爵よりジョン・グレイ閣下へ

『おとうさんへ』
よく考えた結果、僕はリチャードソン大尉の提案を受け入れることにし、ある上官の通訳としてお供をし、ケベックへ行くことにしました。僕のフランス語が、それに充分だと判断してもらえたからです。
ハウ将軍は、同意してくれました。
僕はまだランドル・アイザック大尉には会っていませんが、来週アルバニーで合流する予定です。
いつ帰ってくる予定なのか、次に手紙を書く機会がいつなのかもわかりませんが、可能な限り連絡をします。
それまでは、愛情をこめて僕を思っていてください。
あなたの息子、ウィリアムより

1776年の10月末

ウィリアムは、デニス・ランドル・アイザック大尉をどう考えたらよいか、よくわからなかった。
表面上は、どの隊にもいる、愛想が良くて目立たない男だった。
30歳前後、カードをやるときは礼儀正しく、冗談がわかり、浅黒いハンサムで、開けっぴろげで、頼りになった。
それに旅行の連れとしては大変に望ましい相手で、道中を盛り上げる話が好きで、低俗でみだらな詩や歌に関する深い知識も備えていた。

ただ、彼は自分のことを話さなかった。
ウィリアムのこれまでの経験では、ほとんどの人はなによりも沢山自分の話をする。
あるいは少なくとも、最も頻繁にその話をする。

ウィリアムは、何回か試しにつついてみた。
自分自身の誕生に関するかなり劇的な話を提供してみたが、それに対して返ってきたのは、わずかな事実のみだった。
ランドル・アイザックの実父は、英国陸軍騎兵隊だったが、デニスが生まれる前にハイランドでの戦闘で死亡し、母親は1年後に再婚したのだった。

「僕の義理の父親は、ユダヤ人でした。」と彼はウィリアムに語った。
そして「金持ちの。」と、皮肉な微笑みを浮かべて付け加えた。
ウィリアムは、親しげに頷いた。
「貧乏なのより、いいですね。」
そしてそれ以上は触れなかった。
それは十分ではなかったけれど、なぜランドル・アイザック大尉が槍騎兵や火打ち石軽小銃兵など、兵士としての栄光を追い求めずに、リチャードソン大尉の下で働いているかを、ある程度説明していた。
金で地位を買うことはできるが、隊の中で暖かく受け入れられることを保証してはくれないし、縁故の方が『利害関係』よりも有効なある種の事柄にはなおさらだからだ。

ウィリアムの頭に、ふと浮かんだ。
なぜランドル大尉は、リチャードソン大尉の裏任務に没頭し、彼自身の持っている人間関係やチャンスに対して背を向けるのだろうか。
しかしすぐにそのことは、後で考えることにした。

ランドル大尉、父親はハイランドで死亡・・・
ウィリアムの新しい上官は、ちょっと気になる存在です。
「うーん、もっと知りたい。」という方は、ぜひ次をクリックしてから ≪続き を読んでみてください。

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2010年10月21日 (木)

An Echo in the Bone 骨の中のこだま17

場面は、1777年3月3日、ウィルミントンのクレアとジェイミーに移ります。
この前クレア達が出てきたのは、ウィルミントン・ガゼット紙にあの死亡記事について尋ねに行った時(6)ですから、ずいぶんお久しぶりです。


私は、ジェイミーがまた夢を見ていると、すぐにわかった。
彼の顔は焦点が定まらず、まるで自分の皿の上の焼いたブラック・プディング(血のソーセージ)でない何か、心の中を見ているようだった。

彼がこんな様子なのを見ると、私は何を見ているのか、すぐにも聞きたくなってしまった。が・・・あわててそれを抑えた。
尋ねるのが早過ぎれば、彼がその夢を一部見そこなってしまうかもしれないからだ。

おまけに本当のところ、このことは私を羨ましさでぎりぎりに縛った。
彼が見ているものを見ることができるのならば、それが夢であろうと現実であろうと、私は何だってあげただろう。
現実かどうかなんて、まったく問題にならない。
大切なのは、つながりなのだ。
彼の顔にあの表情が浮かんだ時、私の消えた家族を私とつないでいる神経細胞の端っこが、まるでショートした電気ケーブルのように火花を散らし、焼けつくのだ。

私は、彼が夢見たことを知らずにはいられない。
でも夢がいつもそうであるように、それが分かり易かったことはめったにない。


タイムトラベルできるのはクレア。
でも、違う時代のブリアナ達を見ることができるのは、ジェイミーだけ。
そういえば、一番最初にクレアの時代に現れたのは、夢の中のジェイミーだった。
タイムトラベルと夢の謎。
ガバルドンさん、どう料理していくのかな?
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それから夢の中身を知りたい方は、≪つづき をどうぞ。

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2010年10月17日 (日)

An Outlander コミック版 THE EXILE

アウトランダーシリーズ第1作目を、ジェイミーの立場から描いたガバルドンさん原作のコミックです。
オールカラーで、英語がよくわからなくても、いろんなシーンを眺めているだけでも楽しめます。
ここでは、私が気にいった2つのシーンをご紹介します。

たとえば、ジェイミーとクレアの婚礼の晩は、次のもの。
(ガバルドンさんのHP)↓
(ただしこれは最初の案で、かなり過激。出版されたものは、もう少し修正されています。)

2010年9月2日をご覧ください。


それから、絵を担当した Hoang Nguyen さんのクレアのイメージはこちら。
(ジェイミーのイメージ等も楽しめます。)
(メイキング オブ THE EXILE のページです。)↓

216ページをご覧ください。


イメージ壊れる、とご不満の方もいらっしゃるとは思いますが、YOU TUBE などではアウトランダーのイメージムービーなどを作成し、いろいろ楽しんでいる方々がいらっしゃいます。
映画化されるとしたら、キャスティングは誰がいいか、とか。


とりあえずは、ご紹介まで。

↓こんな記事で手抜きのようですが、それでもクリックいただけますか?

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2010年10月14日 (木)

An Echo in the Bone 骨の中のこだま16

13の終わりで、ロジャーがブリアナにオクスフォードへ行った理由を話していました。
彼が確かめたかった考えは、クレアが話してくれたことに原因があり、14と15はそのクレアの話の内容でした。
部隊は再び1980年、ロジャーとブリアナの時代に戻ります。


「というわけさ。」
宵の星々が、山の端の上にかすかに現れ始めていた。
山の夜がベルベットのように降りていたリッジ(多分ジェイミーやクレアと暮らしていた、18世紀アメリカのフレイザー・リッジのこと)の上の星ほどは輝いてはいないけれども。
2人は家に帰ってきていたが、敷居の所でぐずぐずしていた。

「僕は、そのことについて、たびたび考えてきた。
 時間旅行が、神の計画にどんなふうにフィットするのか?
 物事って変えることができるのか?
 変えるべきなのか?
 君の両親は・・・彼らは歴史を変えようとした。
 そのために、えらい頑張った。
 でも、できなかった。
 僕は、そのようにしかならないと思っていた。(ここは訳が怪しい。)
 それに、長老派教会の観点からは、」
そこでロジャーは、声にちょっとユーモアをにじませた。
「運命を変えられないってことは、ある意味、安心だった。
 運命は、変えられるべきではないんだよ。
 『神は、天国におられる。すべての権利とともに』という具合にね。」

「でも、」とブリ―は、折りたたんだコピーを握りしめて言った。
彼女は、そばをはばたく白いガの姿に向かって、それを振り回した。
「でも、」とロジャーは同意した。
「物事は変えられるって証拠がある。」
「私、ママとそれについてちょっと話したわ。」
少し考えてから、ブリアナは言った。
「ママは、笑ったわ。」
「え、笑ったの?」ロジャーは冷たく言い、ブリーはそれに答えて笑いの息を漏らした。
「それを変だと思って笑ったんじゃないわ。」と彼女はロジャーを安心させた。
「私は、時間旅行者が物事や未来を変えるって、可能と思うかどうか聞いたのよ。
 ママは、できるって言ったわ。
 ママ無しでは死んでいたかも知れない人を助けるたびに、明らかにママは物事を変えているからよ。
 その何人かは、もしかしたら産まれなかったかもしれない子どもたちを産んでいるわ。
 どうやって神の力がはたらくのか、プロテスタントのように詳細にしようと考えず、カトリックの人たちがミステリーのままにしているのはいいことだって言って、笑ったのよ。」

「ふむ、何と言ったらいいのかわからないな・・・おっと、彼女はもしかして、僕のことを意味していたのかな?」
「たぶんね。私は尋ねなかったわ。」
というわけで、今度は笑うのはロジャーの番だった。
もっとも、笑うと喉が痛んだ。

「証拠ね。」とブリアナは考え深げに言った。
彼女は正面玄関のそばのベンチに腰掛け、長く神経質で器用な指でコピーを持っていた。
「よくわからないわ。これは証拠なの?」
「たぶん、君の厳格な科学者としての基準では、証拠とは言えない。」とロジャーは言った。
「でも、僕は覚えているし、君もだ。
 もしも覚えているのが僕だけだったのなら、そうだね、僕だってそれは僕の頭がどうにかしちゃったと思うべきだろう。
 でも、僕は君の精神状態には少し重きを置いているんだ。
 おっと、君、それで紙飛行機を作ろうとしているの?」
「いいえ、ただ・・・わお、マンディ!」
ブリアナは立ち上がり、ロジャーが2階の子ども部屋から泣き声がするのに気付く前に動いて家の中に消えた。
ロジャーは下に残って、ドアに鍵をかけた。
普段は彼らはわざわざ鍵をかけたりしない。
ハイランドでは、誰もそんなことはしないのだ。
でも、今夜は・・・



さて、ロジャーはこれからどうするのでしょうか。
お父さんを探しにいくのでしょうか?どこへ?
物語の最初の頃は、軟弱に見えたロジャーだけれど、ずいぶんたくましく成長しました。
そんなロジャーが出した結論とは・・・
また、ネタばれになりますが、それでもOKの方は ≪つづき をどうぞ。
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2010年10月10日 (日)

An Echo in the Bone 骨の中のこだま15

「僕は、そのことはあまり詳しく知らないのです。」とロジャーは言った。
なぜだか妙に、受け身になっていた。
「母は、父と飛行機の写真を持っていました。
飛行機は『ぬいぐるみ人形(RagDoll)』と呼ばれていて、機首にそう書いてあった。
 赤いドレスを着た黒いカールの人形の絵も。」

その写真について、ロジャーはとてもよく覚えていた。
母親が(爆撃で)殺されてしまった後ずいぶん長いこと、枕の下にその写真を入れて寝ていたのだ。
母親の方の写真はスタジオで撮影したもので、枕の下に入れるには大きすぎたし、それが無くなっていることに誰かが気付くと嫌だったのだ。

『ぬいぐるみ人形・・・』とロジャーは繰り返し、突然何かに気付いた。
「何?どうしたの?」
「いや、大したことじゃないんです。ただ、気付いたんです。
 『ぬいぐるみ人形』って、たぶん、父が母をそう呼んでいたんじゃないかって。
 ニックネームというわけですよね?
 父が母に宛てた手紙をいくつか読んだことがある。
 たいていは『お人形さん(Dolly)』という宛名になっていた。
 それに、今黒いカールのことを考えてみると・・・母の肖像写真・・・マンディだ。
 マンディは、母の髪を受け継いでいる!」

「あら、それは良かったわね。」とクレアは冷静に言った。
「私にあのカールについての全責任があるというのは、嫌だったのよ。
 大きくなったら、ちゃんとそのこと、マンディに伝えてね。
 女の子は誰もが、きついカールを憎むものなのよ。
 少なくとも小さい時、他の子と同じようになりたいうちはね。」

他のことに気をとられてはいたが、ロジャーは寂しさをその声に感じ、クレアの手を取った。もっとも彼女は、まだ手に植物を握りしめていた。

「ちゃんと、話します。」とロジャーは柔らかに言った。
「何もかも、話します。子どもたちがあなた方を忘れるなんて、絶対に考えないで。」
クレアはロジャーの手を握り返し、白い花の香りがスカートの上に広がる闇にこぼれた。
「ありがとう。」とクレアはささやいた。
ロジャーは、彼女が少し泣いているような音を聞いた。
それから彼女は眼のあたりをすばやく、もう一方の手の甲で拭いた。
「大切なことなのよ。覚えているっていうのは。
 そう思っていなければ、これを言おうとはしなかったわ。」
「何を・・・言うのですか?」

小さくて硬く、薬品の匂いがするクレアの手が、ロジャーの手を包み込んだ。
「あなたのお父さんに、何が起きたのか、正確には知らないわ。」と彼女は言った。
「でも、みんながあなたに話したことは、間違っているのよ。」

ここから先は、ホントにネタばれになってしまいます。
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2010年10月 3日 (日)

An Echo in the Bone 骨の中のこだま14

さて、クレアの話です。

それは、ロジャー達がリッジを発つ数カ月前のことだった。
ある夜寝付かれなくて、ロジャーは林の中に出てうろつくうちに、くぼ地一杯に咲き乱れた白い花の中にひざまずいているクレアに出会った。花はまるでクレアを取り巻く霧のようだった。

ロジャーは座って、クレアが花の茎を折り取り葉を剥いてバスケットの中に集めている間、彼女を眺めていた。
彼女は花には触れなかったが、その下に生えている何かを引っ張っていた。

「この花は、夜集めなければいけないのよ。」と、しばらくしてから彼女は言った。
「月のない暗い夜がいいの。」
「僕はまさかあなたが・・・」とロジャーは言い始めたが、突然止めてしまった。
クレアは笑った。
「まさかそんな迷信を信じて、私が薬を集めているとは思わなかったんでしょう?」と、彼女は尋ねた。
「違うわ、ロジャー。私と同じくらい生きれば、あなたも迷信を信じはじめるでしょうね。でもこの花は・・・」
彼女の手が動き、暗闇に青白く輝いた。
そしてやさしく汁気たっぷりの一折りで茎を折り取った。
突然豊かな香りが空気を満たした。
それは花のやわらかい香りに重なって、鋭く打ち寄せてくるような匂いだった。

「昆虫が特定の植物の葉にやってきて、卵を産むのは知っているわよね?
植物は虫たちを寄せ付けないために、強い匂いがする物質を分泌するのよ。その必要が最大のとき、物質の濃度も最高になるの。折良く、この殺虫効果のある物質は、薬としてもとても大きな効果を持つのよ。この特別な植物にとって重要な問題なのは、」
クレアは彼の鼻の下を、羽のような茎でこすった。
それは新鮮で、湿っていた。
「ガの幼虫なの。」
「ゆえに、その植物は夜遅くにより多くの物質を分泌するというわけである。なぜならば、その時刻に毛虫たちが餌を食べるからだ、というわけですか?」
「その通りよ。」
茎が引っ込められ、彼女のカバンの中に放り込まれた。モスリンのこすれる音がした。
「そして、植物のいくつかは、ガに授粉してもらうのよ。つまり・・・」
「夜花を咲かせるタイプ」
「でもほとんどは、昼行性の昆虫に悩まされているので、明け方に有益な物質を分泌するのよ。日が高くなるにつれ、その濃度は濃くなっていくの。でも陽が熱くなりすぎると、葉からその油分が蒸発を始めるので、植物は分泌をやめてしまうの。だから香りのある植物のほとんどは、早朝に集めるといいのよ。というわけで、シャーマンやハーブを扱う人たちは、ある植物は月のない晩に、ある植物は日中に集めるように教えたの。こんなふうにして、迷信が出来上がっていったのよ。わかった?」
クレアの声はそっけなかったが、少し楽しんでいるようだった。


さすが、もと海洋生物学者さん、こういった生物のエピソードが楽しいです。
ガバルドンさん、いいなぁ、という方は、下をクリックして応援してください。
そして、戻ってきて続きをどうぞ。

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2010年10月 1日 (金)

An Echo in the Bone 骨の中のこだま13

「僕は、旧聖スティーブンス教会に行ったんだ。」
彼らが家の外に出るとすぐ、ロジャーは唐突に話し始めた。
「ウェザースプーン博士と話すためにね。彼はその教会の司祭なんだ。それに、ウェイクフィールド叔父(ロジャーの育ての親、牧師)の友達だった。僕を子どもの頃から知っているんだ。」
ブリアナの手は、彼が話している間、彼の腕をしっかり握っていた。
ロジャーは敢えて、ちらりと見てみた。
彼女は心配そうだったが、希望と持っているようだった。
「そして?」
彼女はためらいがちに言った。
「それで、とどのつまり、僕も仕事についた。」
彼は、意識して微笑んだ。
「聖歌隊指揮者の助手だ。」

もちろん、そんなことは彼女が期待していたことではない。
ブリアナは瞬きをした。
それから、目が彼ののど元へ行った。
彼は、彼女が何を考えているか、手に取るようにわかった。

彼らが最初にインバネスへ買い物に出かける準備をしているときのことだ。
「それを着ていくつもりなの?」
ブリアナは、彼に躊躇しながら尋ねたのだった。
「そうだよ。なぜだい?染みでもついているの?」
彼は白いシャツの肩越しに見ようと、首を伸ばして振り返った。
染みがあったって、不思議はない。
マンディが、遊びをやめてロジャーに挨拶するために走り寄り、砂まみれの手で彼のズボンを汚していた。マンディを抱き上げてキスをする前に、少し砂を払ったのだが・・・
「そのことじゃないの。」とブリ―は言った。
彼女は唇をギュッとかみしめた。「ただちょっと・・・何というか・・・」
ブリアナは、喉をかき切るしぐさをした。
彼は手を、シャツの開いた襟元へ動かした。
そこにはロープによる傷跡がカーブを描いていた。
手触りでも明らかだった。
皮膚の下に、小さい小石でできた鎖があるかのような傷だった。
少しは薄れていたが、とても目立った。
「何てことないさ。」
彼女の眉が上がったが、彼はブリアナに向かって少しゆがんだ微笑みを浮かべた。
「でも、みんな、何て思うかしら。」
「たぶん、僕が自分で首を絞めてエクスタシーを求める男で、ある日やりすぎちまったんだ、と思うんじゃないかな。」

地元のハイランド人たちといっしょにいるうちに、彼はそれが他の人が想像できる限界なのだと思っていた。
信徒たちは外面上もっとふさわしいことを考えているかもしれない・・・
でも敬虔なスコットランド人の長老派教会員として、それ以上の面汚しなことは想像できないだろう・・・
(この辺、よくわかりません。ごめんなさい)

「あなた、ウェザースプーン博士に話したの?」
ブリアナは、少し考えて尋ねた。
「つまり、彼には知っておくべきだわ。」
「ああ、それは大丈夫。彼は知っている。でも僕は何も説明しなかった。それに彼も聞かなかった。」

「いいかい、ブリー」と彼はその最初の日に言った。
「どちらかを選ぶしかないんだ。僕らはみんなに真実をすべて話すか、何も話さないかだ。いや、出来る限り何も話さないかだ。そしてみんなが好きなように想像するに任せる。話をでっちあげるんじゃ、ダメなんだ。ボロが出る可能性が大きすぎる。」

ブリアナは、この考えが好きではなかった。
ロジャーは、彼女が目を横目で伏せたしぐさから、そのことがわかっていた。
でも彼が正しいのである。それは彼女もわかっていた。
彼女に顔に決意がみなぎり、彼女はうなずいた。その肩はこわばっていた。

もちろん、彼らはいくらかは嘘をいわなければならなかった。
特に、ジェムとマンディの存在を法律上正当化するために。
でも、それは70年代の後半のことだった。
合衆国にはコミューンがたくさん生まれ、ヨーロッパには錆びついたバスやおんぼろのバンに乗った自称『旅行者』という即席のグループがヨーロッパをうろついていた。
ロジャー達は、石の間を抜けた時、子どもたち以外にはほとんど何も携えてこなかった。
しかしブリアナは2つの手書きの出生証明書を少しの蓄えといっしょにポケットに縫い込み、下着の下に入れてきたのだ。
その証明書には、出生に立ち会った医者として、クレア・ビューチャンプ・ランドル医師のサインがあった。

「これは、家庭での出産の証明として使えるわ。」とクレアは、自分のサインの曲線を注意深く書きながら言った。
「それに私は、マサチューセッツ州に認定された医師なのよ、いえ、医師だったのよ。」
クレアは、少しゆがんだ微笑みを浮かべて言い直した。

サークル・ストーンを抜けて1979年へやってきたブリアナ達が、どのようにしてラリーブロッホを買い取ることができたのか、少しずつ明らかになってきました。
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そして、戻ってきて続きを読んでください。

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