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2010年12月23日 (木)

An Echo in the Bone 骨の中のこだま21 ジョン・グレイ フランスへ

本当に、お久しぶりです。
病気以来ずいぶんと穴をあけてしまいましたが、こんなブログでもしばしば、あるいは時々チェックしてくださった方々、どうもありがとうございます。
またこれから細々と頑張っていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
(翻訳が出る前にはなんとか完了したいと思っているのですが・・・)

本のページを繰ってみると、何と偶然にも季節がちょうど一致するではないですか。
ハッピー・クリスマス!


 ジョン・グレイはドーバーへ向かって出発したときに、まだクリスマス気分で一杯だった。
実際、外套のポケットというポケット一杯に、砂糖菓子やちっぽけなプレゼントが詰め込まれていて、腕の中には悪名高い室内履きの入った包みを抱えていた。その室内履きとは、刺繍のスイレンの葉と緑のカエルがふんだんにほどこされたものだった。
ドッティーが室内履きを彼に渡した時、ジョンは彼女を抱きしめ、その耳に『よくやってくれたね。』とささやいた。
彼女は熱烈なキスをしてくれたので、ジョンはまだその感触が頬に残っている感じがし、無意識にそこをこすっていた。
 
 ジョンは、すぐにウィリアムに手紙を書く必要があった。
といっても実際には、特別に急がなければならないわけではなかった。
というのはどんな手紙でも、ジョン自身よりも早く送り届けられることは不可能だったからである。
自分でハルに言ったように、春になって船が航海できるようになったらすぐに乗船するつもりだった。
なんとか間に合えばいい、と思った。

 それは、ヘンリーのためというだけではなかった。
 
 

原因はわかりませんでしたけれど、全快したので、また頑張りたいと思います。
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道は思っていた通りに悪く、カレーへのフェリーはそれ以下だった。
しかしジョンは旅路の寒さや心地悪さには無頓着だった。
ハルに対する心配が軽くなるににつれ、ジョンはネシーが話してくれたことについて考え始ることができるようになった。
兄の回復に影響することを心配し、これ以上負担をかけさせたくなかったため、ハルに言おうと思って言わなかった小さな事実だ。

『あなたのフランス人は、ここへ来なかったわ』とネシーは言って、指についた砂糖をなめて取った。『町に来た時は、ジャクソンの店の常連だったわ。とにかく、今はいないの。フランスに戻ったとみんなが言っているわ。』

『ジャクソンの店・・・』とジョンはゆっくり繰り返した。
彼はネシーの家以外には、風俗店の援助はしていなかった。
でも、ジャクソンの店については確かに知っていたし、友人たちと1、2度訪れたこともあった。
1階では音楽を流し、2階でゲーム、さらに上の階では、より個人的な娯楽を提供する売春宿で、中級の将校たちの間ではとても人気があった。
でも、グレイには確信があったが、パーシー・ビューチャンプの特別な好みに対してサービスを提供できるような場所ではなかった。

『わかった・・・』とジョンは言い、心臓が耳元で鳴っているのを感じながらも、静かにお茶をすすった。
『で、あなたはランドル・アイザックという将校に出会ったことはない?』
それこそが手紙の内容の中で、ジョンがハルに語らなかった部分であった。
デニス・ランドル・アイザックは、ロンドンでもフランスでも頻繁にビューチャンプと共にいる将校として知られている、とジョンの情報源の人物が語り、その名前はつららのようにグレイの心臓をまっすぐ貫いた。

パーシー・ビューチャンプの知り合いとして知られている男が、ウィリアムをケベックへ諜報活動に連れ出している。
それは単なる偶然の一致に過ぎないかもしれない。
しかし、もしそう思うなら、バカだ。

ネシーは『ランドル・アイザック』という名前を聞いて、突然頭を上げた。
それはまるで、犬が茂みで何かのこすれる音を聞いたかのようだった。
『アイ、あるわよ。』と彼女はゆっくりと答えた。
ネシーの下唇には、細かい砂糖の塊がついていた。
ジョンはそれをぬぐい取ってやりたかったし、他の状況であったなら、そうしていただろう。

『というより、聞いたことがある、というべきかしら。ユダヤ人だとみんなが言っていたわ。』
『ユダヤ人?』
それはジョンを驚かせた。
『絶対に、そんなことはない。』

ユダヤ人は、カトリック教徒以上に陸軍でも海軍でも決して任務に就くことはできない。
ネシーは、彼に向って濃い色の眉を上げた。
『多分、誰にも知られたくはないのでしょうね。』と彼女は言って、ネコのように唇をなめ、砂糖の塊を片づけた。『でも私に言えるのは、知られたくないのなら、売春宿に来るべきじゃないわね。』
彼女は心から笑い、それから落ち着きを取り戻し、室内着を肩にかけてジョンをじっと見つめた。炉の光の中で、まなざしは暗かった。

『その男は、あなたのかわいい息子に何かしようとしているの?そのフランス人と同じに?』とネシーは言った。
『ユダヤ人について話してくれたのは、ジャクソンの店から来た女の子なの。その子は彼がズボンを脱いだ時、どんなにショックを受けたか話してくれたわ。もし彼の友人のそのフランス人がそこにいて、眺めようとしなかったらそんなにショックではなかったのよ。そして彼が・・・そのフランス人ってことよ・・・彼女のやる気がなくなったとわかると、2倍払うと言ってきたのよ。だから彼女は引き受けたの。強いていえば・・・』とここでネシーは、まだ残っている前歯に舌の先を載せてみだらな感じでにやりとし、『ちょっとどころじゃなく良かったそうだわ。』

『ちょっとどころじゃなく良かった。』とジョンは取り乱してつぶやいた。
上甲板に残っていたもう一人の乗客がいぶかしげな視線を向けていることには、半分しか気付いていなかった。
『地獄に堕ちろ!』

雪はドーバー海峡にたっぷりと落ちてきて、吹きすさぶ風が向きを変えたので、今やほとんど横なぐりになっていた。船は不快に揺れた。
もう一人の乗客は、身体をはたいて階下に降り、ジョンだけが残った。
ジョンはポケットの容れ物からブランデー漬けの桃を指でつまんで食べながら、近づいてくるフランスの寒々とした海岸を眺めていた。
それは、低く垂れこめた雲の間から、ちらりと見えるだけだった。

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ジョン・グレイと言う人を知ってますか??恋愛にまつわる書籍をたくさん書かれている方です。恋愛は経験して、気づきがあるとは思うのですが、自分以外の意見を聞くことも時には ... [続きを読む]

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