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2011年3月 6日 (日)

An Echo in the Bone 骨の中のこだま25 深海から2

『ジーザス・H・ルーズベルト クライスト!』とジェイミーの個人的な船首像がそう言いながら、とても心配し気をもんだ表情をして、突然傍らに現れた。
『あなたの手が!』
『あい?』とジェイミーは、心地悪さに不機嫌になって、その手を見下ろした。
『何がいけないのだ?指はみんな附いている。』
『その手について、まともなのはそれだけよね。まるで、ゴルディオスの結び目のように見えるわ!』
クレアはジェイミーの脇に跪き、両手に彼の左手を包み込み、力強くマッサージを施した。
それは明らかに効果的だったが、同時にとても痛烈だったので、ジェイミーの目に涙が滲んだ。彼は両目を閉じて、喰いしばった歯の間から、ゆっくりと呼吸をした。

クレアはジェイミーを、一度にたくさん書きすぎたと言って、なじった。
いったい何をそんなに急いで書いていたの?

『私たちがコネティカットに着くには、何日もかかるのよ。それに、スコットランドまでは何か月もよ。行くまでの間に1日1行書いても、まだ『詩編』を全部引用できる時間があるのに。』
『俺は、書きたかったんだ。』と、ジェイミーは言った。

クレアは、何やら見下したことをぶつぶつと呟いた。その中に『スコット』と『ブタ頭』という言葉が聞こえたが、ジェイミーは気づかないふりをすることにした。

そう、ジェイミーは書きたかったのだ。書くことで、彼の考えが白黒はっきりと整理され、紙に書くということで、安心することができたのだ。
さもなければ心配事は、まるで泥の中のマングローブの根っこのように、頭の中に詰まってしまうのだった。

それに、そのこと以上に…屈んでいる妻の頭のてっぺんを注視しながら、ジェイミーは考えた。逃げ場が欲しかったのではない。…ノース・カロライナの海岸が遠くに去っていくのを見ると、娘とロジャー・マックから離れていくように感じ、彼らに手紙を書くことで得られる、繋がっているという感じが欲しかったのだ。

 『もう一度、会えると思う?』とファーガスは、別れる直前に聞いたのだ。『フランスに行くんでしょう?』
ファーガスとマーサリ、それにリッジの人々が知る限りでは、ブリアナとロジャーは戦争を避けるためにフランスに行ったということになっていた。
『いや。』とジェイミーは言ったが、心が寒々としているのが声に現れていなければ、と願っていた。『二度と会えないと思う。』

ファーガスの力強い右手が、ジェイミーの腕をぐっと掴み、それから力が緩んだ。
『人生は長い。』と彼は静かに言った。
『あい。』とジェイミーは答えたが、(誰の人生も、それほど長くはない。)と心の中で考えていた。

ジェイミーの手は、少し良くなってきた。クレアはまだマッサージを続けていたが、その動きはもはやそれ程痛くはなかった。
『私も、会いたいわ。』とクレアは静かに言って、ジェイミーの拳にキスをした。『手紙をちょうだい。私が書き終えるわ。』


さすが、ヒーラー、クレアさん。
家族が離れ離れって、悲しいね。
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 お父さんの手、今日はこれ以上書けないのよ。
この船について、船長の名前以外にもひとつ、特筆すべきことがあります。

私は今日、倉庫に降りて行き、たくさんの箱を発見しました。
すべての箱に『アーノルド』という名前と『ニューヘブン コネティカット』という言葉がステンシルで書かれていました。
 私はある乗組員(ジョン・スミスというとてもつまらない名前の男ですが、その特徴の無さを補うように、彼は3つの金の耳輪をしています。片方の耳に1つ、もう一方に2つです。それぞれの耳輪は、沈没から生還した記念なのですって。お父さんがそれを知らないことを祈るわ。)に、アーノルド氏というのは、とても裕福な商人だろうと言いました。
スミス氏は笑い、実際ミスター・ベネディクト・アーノルドは、アメリカ大陸軍の大佐で、とても勇気のある将校だそうです。
箱は、彼の妹のハンナ・アーノルド嬢宛で、彼が戦争の仕事に携わっている間、コネティカットでアーノルド氏の3人の息子の面倒を見ながら輸入や乾物店の経営をしているということです。

ベネディクト・アーノルド

 それを聞いたとき、私は背筋がぞくっとしました。
私はこれまで、歴史上知っていた人物の何人かに出会ってきました。
そしてとうとう、破滅に向かうとわかっている人物に会ってしまったのです。
この感覚には、なじむことなどできません。
私は、これらの箱を眺め、考えました。
ハンナ嬢に手紙を書くべきなの?
ニューヘブンで船を降りて、彼女に会いに行くべき?
そして何が起こるのか、正確に話すべき?

これまでのところ、私たちの経験では、起ころうとすることを変えられることなど、何もないのです。
そして状況を客観的にみると、その手段もわからないのです…でも…それでも!

 私は、歴史自体を作ったかどうかに関わらず、その行動が特筆すべき効果をもたらした人物に、たくさん会ってきました。
ある行動が歴史を変えないって保障、ある?
あなたのお父さんは、そう言います。
誰の行動でも、未来に何らかの影響を与えるのです。
確かにその通りだと思います。
でも、ベネディクト・アーノルドのような人物のすぐそばを通り過ぎるようなとき、右に舵を切りたくなるのです。ロバーツ船長の好きな言い回しではね。(この状況では、左に舵を切ったら、とても衝撃的だと思います。)

さて本題から外れたので、この手紙のもともとの主題に戻りましょう。
つまり、ビューチャンプ氏の謎について、です。
あなたのお父さん…フランクのことです…もしあなたがまだ、お父さんの仕事場から持って帰ってきた箱や書類をまだ持っていて、自由になる時間があるのなら、色鉛筆の手の絵で覆われた古いマニラフォルダーがあるかどうか、探して見てください。
色は、空色と金色だったわ。そうそう、ツバメたちも描いてあったはずよ。
運が良ければ、何年も前にラムおじさんが私に書いてくれた、ビューチャンプの家系図が入っているわ。

それを見て、1777年に生きていたのが、パーシヴァルかどうか、見てください。
単なる好奇心ですけれど。

少し風が吹いてきました。
何も荒くなってきました。
手紙を閉じて、ジェイミーを下に連れて行き、静かに吐かせて、寝かそうと思っています。

     すべての愛をこめて
       ママより


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