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2011年3月10日 (木)

An Echo in the Bone 骨の中のこだま26 湾の牡鹿

ロジャーはスタウト・ビールの空き瓶の口を、注意深く吹いて、ボーという音をたてた。
もう少しだ。
少し深く息を吹き込もう。
もちろん、あの唸り声にあった、ひもじそうな音色には欠けている。
でも音程は…
彼は起き上がり、冷蔵庫の中をあさり、チーズと何が入っているのかわからないマーガリンの容器(中身がマーガリンではない方に賭けてもよい)の後ろを探った。

シャンペン・ボトルの中は、1インチ程しか残っていなかった。それは、1週間前にブリアナの就職を祝ったディナーの残りなのだ。
誰かが瓶の口をつましくアルミホイルで覆っていたが、もちろんシャンペンは気が抜けていた。
ロジャーは中身を流しに捨てに行ったが、生涯にわたるスコットランド人としての倹約精神はそう簡単に無視できなかった。少しの躊躇もなく、彼は残りのシャンペンを飲み干した。
瓶を下しながら、アニー・マクドナルドがアマンダと手をつなぎ、彼をじっと見ているのに気付いた。

『少なくとも、それをコンフレークスにかけようとしているわけじゃないわよね。』と彼女はロジャーの脇をすり抜けながら言った。
『さあ、ペットちゃん』と言って、マンディを子供用の椅子に座らせ、雇い主のモラルの低さに頭を振りながら、部屋を出て行った。

『パパ、ちょうだい!』マンディは、輝くラベルに惹かれて、シャンペンの瓶に手を伸ばした。
親として一瞬ためらったロジャーの頭の中に最後が破壊行動で終わるいくつかのシナリオがよぎり、マンディには代わりにコップ1杯のミルクを渡し、シャンペンの瓶の細く伸びた口を自分で吹いて、深みのある音楽的な音を響かせた。

『パパ、もう一回!』マンディは惹きつけられた。
ロジャーは少し自己満足に浸ってもう一度音を出し、マンディは笑い転げた。
彼は、黒ビールの瓶を取り上げて吹き、それらを取り替えながら、『メリーさんの羊』のリズムで2つの音による変奏曲を演奏した。


お久しぶりです。
これからしばらく、ロジャーとブリアナたちの時代に変わります。
そういえばロジャーは音楽家でしたね。
この瓶の音で、何を表そうとしているのでしょうか。
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ボーボーという音と、マンディの金切声の嵐に惹かれて、ブリアナが敷居に顔を出した。
手には明るい青のプラスチック製の帽子を持っていた。

『なべかまバンドでも作る気なの?』と彼女が尋ねた。
『もうすでに作ったよ。』とロジャーは答えた。
そしてマンディにできるのは、最悪でも絨毯の上に落とすことぐらいだろうと判断して、瓶を彼女に渡し、ブリアナと一緒にホールに出た。
そこで彼は彼女を引き寄せ、深くキスをした。
台所との間のドアが、緩衝材の『フーシュ!』という音をたてて閉まった。

『朝食に、シャンペン?』しばらくして、ブリアナは尋ねるためにキスを中断した。
そしてもう一度ロジャーを味わうために、キスに戻った。
『瓶が必要だったんだ。』とロジャーはキスを返しながらつぶやいた。
ブリアナは朝食に、バターと蜂蜜をかけたポリッジを食べていた。
彼女の口の中は甘く、舌の端に残っていたシャンペンの苦みを変えた。
ホールは寒かったが、ブリアナはフリースのジャケットの中でトーストのように暖かかった。
ロジャーの指は、そのフリースの端をなぞって中に伸び、彼女の背中の下着の下の肌にじかに触れていた。

『いい1日になるといいね。』とロジャーはささやいた。
彼は指をブリアナのジーンズの後ろに滑り込ませようという欲求と闘っていた。
着任したばかりの北部スコットランドの水力発電所の検査官の尻を撫でまわすのは、あまり尊敬をあらわしていないからだ。
『その帽子を、後で家に持って帰ってくるよね?』
『もちろんよ。なぜ?』
『ベッドでかぶってくれるかな、と思ってさ。』

ロジャーは帽子をブリアナの手から取って、やさしく頭にかぶせた。
帽子の下で、ブリアナの光彩が群青色に変わった。
『かぶりなよ。そしたら、僕がシャンペンの瓶で何をしようとしていたのか、話してあげるよ。』
『まぁ、中には私が断れない要求も・・・』ブリアナの群青色の目が突然横に逸れた。
ロジャーも同じ方向を見て、アニーがホールの端で箒とちりとりを手に持って、細い顔に興味しんしんの表情を浮かべて、じっと見つめているのに気が付いた。

『そうだね、・・・じゃ、よい1日を。』とロジャーは言い、急いでブリアナを解放した。
『あなたもね。』と顔をおかしさにゆがめながらホールを横切って目を丸く見開いているアニーの前を通り、彼女に明るくゲール語であいさつをした後、ブリアナはしっかりロジャーの肩を掴んで、キスをした。

突然、台所からガチャンと割れる音がした。
ロジャーは機械的に間仕切りのドアに向かったが、今起きた災難に対しては、半分以下の注意しか払っていなかった。
彼の気持ちは今突然気づいた事実、つまり仕事に行くために現れた妻がニッカーズ(ゆるいズボン)をはかずに出かけたということに、大部分が注がれていた。

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