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2011年6月

2011年6月27日 (月)

An Echo in the Bone 骨の中のこだま30 トンネルの中の虎

あらぁ、今週の週末更新を逸してしまったわ。
ごめんなさいね。
進歩といえば、職場のホタルを捕獲して(それも雄と雌のゲンジボタルよ)、繁殖計画の第一歩を踏み出したことだわね。
乞う、ご期待!


ブリアナが最初に災難に気付いたのは、軌道に差し込んだ一条の光が小さくなり、巨大なドアが閉まって、背後でトンネルの中の空気を振動させるような大きい『バァーン!』という音がして、暗闇になってしまったときである。

ブリアナは、もしジェムが言ったなら即、その口を洗ってしまっただろうような言葉を使って罵った。
それは心からの怒りで口にしたが、息をひそめて言った。
というのは、ドアが閉まったとたんに何が起きたのか気付いたからだ。

何も見えなかった。
ただ、網膜が突然の暗闇に反応して見える、ぐるぐる回る色彩だけが見えた。
しかしブリアナはトンネルの中に3メートルしか入っておらず、ボルトが差し込まれる音が聞こえた。ボルトは鋼鉄のドアの外側の大きなハンドルで動かされ、骨が噛み砕かれるようなガリガリとこすれる音をたてた。

ブリアナは振り返り、注意深く5歩数え、手を前に伸ばした。
そうよ、ドアがあるわ。大きくて、固くて、鋼鉄製。そして今はしっかりロックされている。
外で笑っているのが聞こえた。

くすくすとね!とブリアナは怒りに彩られた侮蔑を込めて思った。まるで小さい男の子!
小さい男の子だわ、実際のところ。
ブリアナは、怒りとパニックを振り払うために、何度か深く息をした。
暗闇によるめまいが消えた今、彼女には細い光の線が見えた。
それは15フィート(4.5メートル)のドアを縦に分断していた。
一人の男の高さの影がそれを遮っていたが、ささやき声とくすくす笑いが聞こえ、ぐいっと下がった。
誰かが覗こうとしたんだわ。馬鹿なやつ。
この中の何かを見ようとするなんて、幸運を祈るわ。
髪の毛の太さの光を除いたら、ロッホ・エロクティの下にある水力発電所のトンネルは、地獄の穴のように真っ暗だった。

少なくとも、方向を定めるために、あの髪の毛の光は使える。
それでも、慎重に呼吸をしながら、ブリアナは注意深く足を踏み出して、左の方へ進んでいった。
彼女は、けつまづいたり、音を立てて転んで、外側にいるヒヒたちを必要以上に喜ばせる気はなかった。
そちらの壁には金属製の箱があって、トンネルの光源をコントロールしているスイッチがあるはずだ。

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あれ?ブリアナはいつ水力発電所の調査官としての面接に行ったんだっけ?という方は、こちらをごらんください。あまり詳しくは書かなかったのですが・・・

An Echo in the Bone 骨の中のこだま3

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2011年6月18日 (土)

An Echo in the Bone 骨の中のこだま29 湾の牡鹿4

学校から帰ってきてすぐ、家を飛び出したジェム。
学校で、何があったのか、明らかになります。


『ここにいるよ、ダ!』
ジェミーの声が、上の方から聞こえてきた。少し震えている。
ロジャーは振り向いて、ジェムが『樽のひとはね』の上に座っているのを見つけた。
網の袋を胸に抱えている。
『OK,じゃ、降りておいで。』
安心感が、困惑と闘ったが、徐々に打ち勝った。
ロジャーは手を伸ばし、ジェムは岩をすべりおりて、父親の腕の中にどさっと納まった。

ロジャーはぶつぶつ言って、ジェムを座らせ、地面に落ちていた網の袋を取り上げるためにかがんだ。パンとレモンスカッシュに加え、いくつかのリンゴと、チーズの大きな塊、それかたチョコレートビスケットが一箱入っていた。

『少しここにいようと思っていたんだね?』とロジャーは尋ねた。
ジェミーは赤くなって、脇を向いた。
ロジャーは振り返り、斜面を見上げた。
『あそこだよね?おじいちゃんの洞窟は?』
ロジャーには、何も見えなかった。
斜面には、ヒースと岩がごちゃまぜになり、そこに沢山の発育の悪いハリエニシダの茂みと、まばらなナナカマドやハンノキの幼樹が混ざっていた。

『あい、ちょうどそこだよ。』と、ジェミーは斜面の上の方を指差した。
『あの、魔女の木がもたれているところ、わかる?』

ロジャーは、ナナカマドの成長した木が、年齢のためにこぶになっているのを見た。
もちろん、ジェイミーの時代からそこに生えていたわけではないだろう。それとも?
だが洞窟の入り口の気配はなかった。
下の方で起きていた戦いの音がやんだ。
ロジャーは、負けた方の鹿がこっちへ戻ってこないかと見まわしたが、明らかに大丈夫そうだった。
『パパに見せてくれる?』とロジャーは言った。
ジェムは、とても居心地悪そうだったが、この言葉で少しくつろいだようで、振り返って、斜面を登りはじめた。ロジャーは、すぐ後を追った。

たぶん、その洞窟の入り口の隣に立っていても、まったく気づかなかっただろう。
その入り口は、岩石の露頭(がけ)とハリエニシダのこんもりとした植生で隠されていた。正面に立たない限り、その狭い隙間を見つけることはできない。

洞窟から、一陣のひんやりとしてしめった風が、ロジャーの顔に向かって吹き出した。
彼はのぞきこもうと、ひざまずいた。
数フィート(50㎝から1mくらい)以上は見えなかったが、あまり居心地はよさそうでなかった。

『ここで寝るのは、寒かっただろう。』と彼は言った。
そしてジェムを見て、そばの岩の方へ身振りをした。
『座って、学校で何が起きたのか、話してみないか?』

ジェムはつばを飲み込み、体重を左右に移動させた。
『嫌だ。』

『座りなさい。』
ロジャーは声を荒げなかったが、従うべきだということは明らかにした。
ジェムは、きちんと座りはしなかったが、後ろ向きにずれて、洞窟の入り口を隠している岩でできた露頭にもたれた。彼は目を上げなかった。

『むち打ちされた。』
ジェムは、あごを胸にうずめたまま、つぶやいた。

『そうかい?』
ロジャーは、平静な声で言った。『そりゃ、たいへんだったね。僕も生徒だったころ、一度か二度はやられたが、好きじゃなかったな。』

ジェムの頭が跳ね上がった。目が見開いていた。
『あい?なぜやられたの?』
『けんかさ、主にね。』とロジャーは言った。
ジェムに言うべきではなかったかもしれないが(悪い例だからだ)、それは事実だった。
それに、もしジェムの問題がけんかなら・・・

『今日やったのは、けんかかい?』
ロジャーは座りながらジェムにざっと目を走らせ、今度は近くから観察した。
ジェムは、怪我はしていないようだ。
しかし、向こうを向いたとき、ロジャーは耳がどうかしているのに気付いた。
耳は真紅に染まり、耳たぶはほとんど紫色に近かった。
ロジャーはそれを見てあまりに驚き、思わず『何が起こったの?』と繰り返した。

『ジャッキー・マッケンローが、むち打ちのことを聞いたら、家でもう一発パパからむちをもらうって、言ってた。』
ジェムはつばを飲み込んだが、今度は自分の父親をまっすぐ見つめていた。
『パパ、そうするの?』
『わからないな、そうしたくはないね。』

ロジャーはジェミーと一度せっかんしたことがある。そうしなければならなかったのだ。
そしてどちらも、もう二度とそれを経験したくはなかった。
ロジャーは手を伸ばし、ジェムの燃えるような耳にそっと触れた。

『息子よ、何が起きたのか、話してごらん。』
ジェムは深く息を吸って、ほおを膨らませ、それからあきらめて息を吐きだした。


がんばれ、ジェム、
小さなジェムと、今週も頑張って更新できた私に、応援のクリックを!
ここのところQueenにはまり、ずっとBGMで流しながらPCに向かっています。

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2011年6月11日 (土)

An Echo in the Bone 骨の中のこだま28 湾の牡鹿3

『いったい何が・・・』
ロジャーは本を脇に置き、立ち上がって家の裏手に出た。
あやういところで、ウィンドブレーカーとジーンズを着たジェムの小さい姿が(学校へジーンズで行ってはいけなかった)、牧草地を横切っていくのが見えた。

ジェムのスピードについていくのは難しかったが、そのかわりにロジャーはペースを落として、距離を置いて後をつけた。
明らかに、ジェムは病気ではなかった。
おそらく、何か劇的なことが学校であったのだろう。
学校側がジェムを家に帰したのか、それとも勝手に帰ってきてしまったのだろうか?
まだ誰からも電話はなかったが、昼食時間を過ぎたばかりなので、ジェムが逃げ出してきたのなら、いなくなったことに気付かれていないのかもしれない。
学校からは歩いてほぼ2マイルの道のりで、そんな距離はジェムにとっては何でもない。
ジェムは野原をさえぎっている石垣に着き、それを飛び越え、さらに羊でいっぱいの牧草地を、方向を見定めて横切って行った。
どこへ向かっているのだろうか?
『それに、なぜ今それをやらなきゃならないんだ?』とロジャーは独り言をいった。

ジェムはまだ、ブロッホ・モルダ村立学校に数か月しか通っていなかった。
これが彼にとって、20世紀の学校生活の最初の経験なのだ。

こちらに帰ってきてから、ブリアナがマンディを死から救った手術の後回復するまで共に過ごす間、ロジャーはボストンで彼の個人教授をした。
マンディが元気になって家に帰れるようになって、一家は次にどうするべきか決めなければならなくなった。
ボストンではなく、スコットランドへ行こうと決めたのは、主にジェムだった。
ブリアナも、そう思ってはいた。
『スコットランドは、こどもたちのの遺産なのよ。』と彼女は言った。
『いずれにせよ、ジェムにも、マンディにも、両親のどちらもがスコットランド人なのよ。彼らにそれを残してあげたいのよ。』
そして言うまでもなく、祖父とのつながりだ。

ロジャーも議論したが、ジェムがスコットランドではあまり目立たないだろうと認めた。
テレビとアメリカ合衆国での数か月の生活にも関わらず、ジェムはいまだに強いスコットランド訛りで話すので、ボストンの小学校では目立つに違いないからだ。
おまけに、訛りがなくても、ジェムは人の注意を惹きつけるタイプの人物なのだということを、ロジャーは個人的に感じていた。

さらに、ラリーブロッホの生活やハイランドの小さい学校で過ごすことは、ジェムがノースカロライナで親しんできたものとかなり近いものだということには、疑いもなかった。
子供たちが天然に持っている柔軟性を考慮しても、直面したものに対して、ジェムがたいへんうまく順応してきたとロジャーは感じていた。
自分自身がスコットランドでどのような見通しがあるかといえば・・・それについては、沈黙を守るべきだろう。

ジェムは、牧草地の端に着き、道路へ出る門の前で邪魔をしていた一群の羊を追い払った。一頭の黒い雄羊が頭を下げてジェムを脅したが、ジェムは羊に邪魔はされなかった。
叫んで、持っていた袋を振り回すと、雄羊は驚き、素早く後ろに下がって、ロジャーを微笑ませた。



おーい、ジェム君、どこ行くの?
今回は、ジェムの悩みについてです。
おじいちゃん(ジェイミー)似のジェムに、学校でいったい何がおきたのでしょうか?
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2011年6月 5日 (日)

An Echo in the Bone 骨の中のこだま27 湾の牡鹿2

またまた間があいてしまいました。
ブリアナが仕事に出かけたとき、台所でガチャンと音がしたのにロジャーが気づいたところでしたね。


マンディは、どうやってそうしたのかは神のみが知るところであるが、シャンペンボトルを投げて窓ガラスを割り、ロジャーが走りこんだときは、テーブルの上に立ってちょうど割れたガラスの端に手を掛けたところだった。

『マンディ!』
彼はマンディを掴んでテーブルから引きずりおろし、続いて彼女のおしりを一度平手で叩いた。彼女は耳をつんざくような金切声をあげたが、ロジャーはマンディを抱えたまま、敷居のところで口と目を丸いO(オー)の形に明けているアニー・マックの脇を通って台所の外に連れ出した。
『窓ガラスを何とかしてくれるね?』と彼女に言った。
ロジャーは、地獄に落ちたかのような罪の意識を感じていた。
マンディに瓶を渡すなんて、何を考えていたんだろうか?
ましてや瓶を持たせたまま、一人で放って置いたなんて!

彼はまた、アニー・マックに対しても、いくらかいらだちを感じていた。
ともかく彼女は、子供たちの面倒をみるために雇われているのだ。
しかし彼もまた、部屋を出る前に彼女が戻ってきたか、確かめるべきだったのだ。

ブリアナに対しても同様に、いらだちを感じた。
自分の新しい仕事に夢中になって飛び込み、彼が家の面倒をみるのが当然だと思っているからだ。

ロジャーにはこのいらだちが、自分の罪の意識から逃れるための悪あがきに過ぎないことはわかっていたので、考えないようにした。そしてマンディをなだめ、テーブルの上に立ってはいけないとか、家の中で物を投げてもいけないとか、とがったものに触ってはいけないとか、助けが必要なら大人を呼ぶべきだなどの話をしながらも、ありそうにもないことだと内心皮肉に微笑んだ。マンディは、彼が今まであった中でも最も独立心の強い三歳児なのだ。それは何かを意味している、と彼は同じ年のときのジェムのことを考えた。

アマンダについて、ひとつ言えることがある。彼女は、恨みは持たない。叩かれて叱られた5分後に、彼女はくすくす笑い、彼に人形で遊んでくれとねだっているのだ。

『パパは今朝、仕事があるんだ。』と彼は言ったが、かがんでマンディが肩によじ登れるようにした。『おいで、アニー・マックを探そう。君とお人形で、アニーが貯蔵庫を整理するのを手伝えるかも。』

マンディと同じくブリアナも、独立心が強くて思い通りにはならないのさ。
君はきみで、自分のやり方に自信を持つしかないのだ、ロジャー。
苦労人ロジャーに応援のクリックを!
(それにしても久しぶりすぎて、何の話か、忘れちゃったぞ、という方も、がんばって書けという、おしかりののポチをお願いします。)
後半、クレアやジェイミートのつながりが、少しだけ出てきます。
おたのしみに。

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